いい大人のための性教育 (6)

書いた人: 妻

第一回 「いい大人のための性教育 (1)
前回 「いい大人のための性教育 (5) 自分を大切にするために

 

 このシリーズの最初に、「性教育とはセックスの仕方を教えることだけではない」と書きました。
 実際、ここまで書いてきた内容は、セックスそのものについての話はあくまで一部だったのではないでしょうか。でもそれ以外の部分についても、紛れもない性教育だったのではないでしょうか。

 私はそれらすべてがとてもとても大切なことだと思っています。すべては繋がっていて、それらが自分自身と相手をかたち作る大切な要素のように思えます。

 性教育とは、究極的には「自分は自分、自分を素直に認識して認めてあげること、他人の内面を属性によって判断しない、相手をきちんと見て向き合う」という、自分と人との繋がり方の話になるように思います。

ポルノは幻想

 非常に今更感あるお話ですが、一応触れておかないといけません。

 残念ながら日本には、現実のセックスはこんな風にした方がいいよというような教材的なものが存在しませんので、エンターテイメント作品であるアダルトビデオなんかを見て「セックスとはこうするらしい」と思う方が、結構いらっしゃるのかなと思います。

 いえ、実際には「AVは演技でしょ」と言葉の上でわかっていながらも、結局は「本来の正しいお手本」が無い故に、どことなくおぼろげにAVの格好を模倣せざるを得ないような感覚があるのではないかと想像します。

 挙げていけばきりがないですが、大きく誤解されそうな部分を具体的に書き留めておこうとは思います。

ピストン速度と動き方

皆知ってると思うけどピストンの速度はAVと等速なんてありえない」というエントリでも書きましたが、とにかく速度が速すぎます。
 また動き自体がとても強引で、ゴンゴンと奥を押すような動作や、入口まで引き抜いた後にガツンと突っ込むような挿入の仕方は、完全にAVの演出と言えます。あんなことを毎回されれば、女性の女性器、膣入口や内部は擦り切れて文字通り悲鳴を上げてしまいます。

 物理的なトップスピードはそもそも必要ありません。
 素早く動かせば動かすほど、粘膜表面は過度な摩擦の刺激により麻痺状態になるので、気持ち良い良くない以前の問題になります。

 1秒間に0.5回~速い時で2回往復程度で十分です。

体位は完全にパフォーマンス

 参考になる体位もありますが、その体位は実際には無理というものが沢山あります。
 もちろん身体の硬さは人それぞれなので、できるできないもそれぞれ違います。

 私(瑞谷)の身体の硬さはとても平均的で、座って前屈(長座前屈)すれば足の先を掴めるほど、立って前屈だと床に手が付けられるくらい。

 この私でも、例えばいわゆる普通の「M字開脚」は足を閉じ気味にすればできますが、もっと身体側に足を抱える体勢だったり足を広げたりということは無理です。出来てもとても辛く、その体勢を続けながら気持ちよくなるなんてことはできません。

 例えば…
 DMM:「出会って4秒で合体」シリーズより インタビュー中に……(18禁)
 上記作品中の、サンプル画像中ほどに黄緑と黄色のクッションを背中に敷いて挿入しているシーンのキャプチャがありますが、足(太もも)が身体にくっ付いている体勢は、人によってはできません。

 正常位でも、男性の腕で女性の足を抱え込んでいるような状態の体位やそれに近い抱え込み方の場合、更にそこから身体を密着させれば同じように足が曲げられてしまうのでとてもしんどいです。

 M字の状態から、更に腰を浮かせて陰部をカメラによく見せるような姿勢なんかよく見かけますが、これも胸側への圧迫が強く、またやり過ぎれば首を痛めます。

 仰向けバック? 二人共が仰向けになって、女性が上でバックから挿入する体勢は、どちらもかなりしんどいですが短時間ならそれなりにやれるといえばやれます。

 

 とまあ、挙げて行けばきりがないくらい「それはちょっと無理だよ」という体勢は沢山あります。基本的に人間の身体は、関節があってもその稼働範囲は(柔軟度によりますが)限られます。
 また四つん這いの伏せる体勢になった自分の身体を支えるには、手足4本の内最低3本ないと無理ですし、その3本も筋肉があまりない人にはしんどいです。

 更には、人の身体に手や足を置いて自分の身体を支えるなんてことをすれば、それをされる側は掛け方によっては痛みを伴います。当たり前のことですが。

 

 もちろん、正常位なんかを例に挙げると、男性側が完全に自分自身の体重を自分だけで支えるというのは(覆い被されば被さる体勢ほど)しんどいでしょう。
 面としてある程度女性側に圧し掛かっても、平気な度合いはありますので、すべてがダメということではありません。

別に潮吹きは気持ちいわけじゃないから

 出すのが好きな子というのはいますが……

 実際にはおしっこを出すようなものなので(夫記事:「潮吹きってなんだろう?」参照)、人によっては爽快感があるかもしれませんが、ままその程度ですので私としては「そんなものはしなくていい」という見解です。

 中にはスキーン腺が発達(というか残存?)していてセックス中ビシャビシャにする人もいるようですが。

日本の女性はかなりの割合でイケていない

 AV女優さんのオーガズムは大半が演技です。どう見てもイッていません。
 更に言えば愛液を見れば本当に感じているのかどうかはある程度わかります。(「膣内の感触と愛液の変化について」参照)

 なので、女性は「イクふり」なんてしなくていいし、男性は「イカさなければ」と思わなくたっていいんです。
 皆が気持よくイケているなら、こんなブログは必要ないし、皆さんお読みになる必要もないのですから。

 でもお互いが納得していないのに「イケないならそれでいい」と終わってしまってはいけません。一緒にイケるように楽しいセックスにできるように頑張ろうとすることには、とても意味があります。

男性だから、女性だからがどんどんなくなればいい

 「男性だからこうあるべき」「女性だからこうあるべき」

 そういう価値観がどんどんなくなり、「自分だから」という価値観で皆が納得いく世界になれば、きっと今よりも皆楽しく生きられるのではないか。そんなことを思います。

 例えば「デートに行ったら男性が食事代を出すべき」
 こんなくだらない価値観を引き摺っている人はどのくらいいるでしょうか。

 私は別に「割り勘が正しい」と主張したいのではありません。結果的にどちらかがおごるケースもあるでしょう。そんなのは個々の問題でしかなく、それを「男性だから」と区切る意味なんて、もうないでしょう。意味がない世界にしなければなりません。

 確かに昔は、男性のお給料の方が遥かに高かったわけですが……。

目の前のパートナーと向き合えていますか

 相手が「こんなことを今考えているだろう」という予測はできます。
 それは私の普段の生活でもそうです、もう16年17年一緒にいれば「今こんな風に考えて居そう」という予測はできて、大体当たっていることが多いです。

 でもそれも結局は「相手をきちんと見て向き合って対話する」の意味合いから掛け離れたことをしているなと、考えます。

 「女だからこんな風に考えているだろう」「男だからこんなだろう」「アレが好きだから」「こういうジャンルの人間だから」「内向的だから」「オタクだから」「理系だから」

 相手にレッテルを貼って「こういう人」と思う事はとても簡単です。
 でもやっぱり、相手に向き合って、真摯に言葉を交わして、相手の今を知ることが常に最初の一歩のような気がしています。

 自分に関わる全ての人とそれをすることはできません。でも、目の前のパートナーとだけは、真摯に付き合っていきたいですよね。

禁欲教育は実を結ばないという現実

 このエントリもいよいよ最後になりました。

「性教育から随分離れたんじゃない?」 なんて思われたかもしれません。
 でも私にとっての性・性教育とは「自分と向き合うこと」以外の何物でもありませんでした。

 

 幼い頃からエッチな物に囲まれて育った私は、果たして「ロクでもない大人」になったでしょうか。いえ、私が「割と良心的な大人」だと仮定するとして(お許しを…)、ここに至ったのはあるいは奇跡と言えるのでしょうか。

 私は思えば、ロクな性教育を受けていない…とまでは言いませんが、暗に「セックスはしてはいけないこと」「子供は性的な物を見てはいけない」と言われて育ちました。
 高校の教科書には、性交等については一応載っていたものの、具体性は皆無と言ってよかったです。でも「堕胎手術の映像」だけは見せられたことを良く覚えています。

 そしていざ大人になれば、きちんとした避妊具の使い方を知らなかった為「コンドームの箱の説明を見て付けたり」、良いセックスの仕方を知らなかった為「イクふりをしたり」、変なオナニーに没頭してみたり……

 

 一部の大人は言います。「子供の内は寝た子を起こすな」「子供のうちに性教育をすればセックスに興味を持ってしまう」
 あるいは随分前の総理も「俺らの時は教えられなくても大人になったらできてた」というようなことを言っていました。

 要するに「子供は性的な事に興味を持たず(大人にとって都合よく)健全に育ってほしい」ということから、子供には「してはダメ」「興味を持ってはダメ」と指導する空気が長くありました。

 

 しかし、ダメと言われて、本当にすべての子供が性的なことへの興味を一切持たなくなるのでしょうか。確かにニブい(成長の遅い?)子はいました。うちの母親なんかは高校の頃まで「女性の陰部に穴がみっつある」ということを知らなかったと言います。

 そんな風に育った人間から見れば「そんなのできるでしょう」となるのかもしれません。あるいは「性的なことへの嫌悪感が強い人間」であれば、そういう世界が理想なのかもしれません。

 

 しかし実際には「幼少の頃から性的な欲求・興味を覚えた人間」というのは沢山います。私も、私の夫もそうです。私の友人ともそういう話をしたことがあります。ネット上を探せばそんな声は山のようにあります。

 太っている人に「食べなければ痩せられる」を説いても、やっぱりお食べになるでしょうね。そうでなければ世の中「高いダイエット食品」や「ダイエットグッズ」が売れたりはしません。
 「ダメ」を謳っても意味のない典型的な例でしょう。

 

 性教育は、正しい知識を与えて、自分で選択させること。これが大前提です。
 漫画やAVを見てそれが「普通」と思ってヒドいセックスをする? 正しいセックスの仕方を教えていないのは「大人」なのです。情報がない為にエンターテイメントさえ「正しい」と思うのです。

 

 ヨーロッパ各国、特にノルウェーやオランダの性教育はとても革新的です。子供に本当にきちんとすべてを教えています。日本の一部の大人が見るとおそらくは卒倒するような内容です。
 でもヨーロッパの子供たちの色々な状況・数値は、日本のソレと比べると遥かに「健全」です。その教育が上手くいっている証拠ですね。

 日本の性教育もヨーロッパのように変わっていくよう、変わっていけるように、その土壌ができるようになればと、私は考えています。

 その為のこのブログと言っても過言ではありません。

 

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