日本で選択できる避妊方法 (5) 緊急避妊のこと

書いた人: 妻

第一回 「日本で選択できる避妊方法 (1)
前回 「日本で選択できる避妊方法 (4) ミニピルのこと

 

 こんばんは、流石の裸族もここのところ服を着ています、瑞谷です

 

 つらつらとここまで避妊についてを書いてきました。
 残念ながら日本での避妊方法の選択肢は、海外特にヨーロッパと比べると多いとは言えません。それでもなんとか選択肢が増えるようにと頑張っている人たちがいます。

 今日はそんな、知らない人がまだまだ多い「緊急避妊」という方法についてです。

 通常、避妊というのは事前に用意をしてセックスに備えるものです。
 セックスについて “ちゃんと” 考えている人はきっと、当たり前にコンドームを用意したり、低用量ピルを飲まれたりするのだと思います。

 でも、誰しも「雰囲気や気分に流されて」ついつい加減になってしまったり、ちょっとくらいイイヤとズボラなことをやったり、わざとしなかったりする可能性が、絶対ないなんて言いきれません。

 人間ですから、常にパーフェクトに常識人でモラルを持って正しく居るなんてこと、なかなかできることではないのです。だから、そんな風に流されてそれをしなかったできなかった人を、喧々と非難はできません。もちろん反省はするべきですが。

 

 “ちゃんとしていた” はずなのに、事故が起こった。誰にでもありえます。

 ・飲んでいたつもりだった
 ・正しくコンドームを付けたつもりだった
 ・外にちゃんと出すつもりだった(抜去法は避妊かな?)

 低用量ピル、ミニピルだって、飲み忘れということはありえます。特に数日にまたがった飲み忘れの場合は深刻です。

 コンドームについては、説明書を熟読して使っているカップルはどれほど居るでしょうか。
 16年8月頃に、「コンドームが化粧品で破損する実験動画」(togetter)がツイッターで公開されました。

 これはラテックス素材自体、鉱物油に接触することで著しく強度が劣化する為で、鉱物油といえばハンドクリーム化粧品類、一部のセクシャルローションなど、身近な物多数に含まれています。合わせてローションも使う場合には表示を必ず確認しておきましょう。
 また柑橘油についても同じく劣化します。すべての柑橘類(みかん、オレンジ、レモン等々)、その成分の入った製品には注意が必要です。

 

 そういう失敗のフォローをする手立てが、一応日本でも存在します。それが「緊急避妊」という方法です。

 

 現在日本で事実上選択できる緊急避妊の方法は、大雑把に2種類あります。

1) ヤッペ法

 避妊失敗からできるだけ早く、タイムアップは72時間(ただし早ければ早い程成功率が高い為、72時間という括りはあまり意味がない)、一定のホルモン量を服用することで、

 排卵を一時的に抑制輸卵遅延内膜の着床条件回避させ、

 受精卵を着床させないようにします。しかし正確な機序についてはすべてが明確にはなっていません。
 (今の発達した世の中でも、緊急避妊以外、医療以外でも「明確になっていないが大体こんな感じ」という推察どまりの事象は沢山あります)

 ヤッペ法は、カナダのヤッペ先生が考案した緊急避妊方法です。特定のヤッペという薬剤があるわけではなく、規定量を賄えられればいくつかの錠剤で実行可能です。
 実際に病院に行った時に「安くてしんどくなる方と、高くてしんどくならない方とあるよ」というようなことを言われれば、しんどくなる方がヤッペです。

 実際に緊急避妊ができる種類を一応挙げておきます

プラノバール / ドオルトン / ソフィアA(中用量 2錠×2回)
 緊急避妊を求めて病院に行けば処方される

低用量ピル(だいたい4錠×2回)
 rurikoさん曰く第一世代は副作用がより強く出るのであまりお勧めでないとのこと…
 第二世代の三相性ピルは後半の黄色の錠剤を使います

ヤーズ(超低用量 6錠×2回)

 書いたとおり、その錠数を12時間間隔で2回飲みます。
 ヤッペ法では、黄体ホルモンと合わせて、副作用が強く出がちな卵胞ホルモンの多量投与になる為、どうしても副作用が強く出てしまいます
 そこで海外で研究開発がされ、黄体ホルモンのみでの緊急避妊という道が開かれました。

2)緊急避妊薬ノルレボ&ジェネリック (レボノルゲストレル法)

 日本で唯一大っぴらに「緊急避妊」を謳っている処方薬です。
 薬価が高く、先行品の「ノルレボ」は納入価格が1万円程度とのこと。実際の処方では15,000円から高い病院では30,000円程します。(自由診療の為)

 2019年に富士製薬からジェネリック品が発売されました。
 納入価格は話によると3.5千円程度とのこと。実際の方ででは五千円~1万円程度の差がみられます(自由診療の為)。

 時間はヤッペ法と同じく、避妊失敗からできるだけ早く、タイムアップは72時間(ただし早ければ早い程成功率が高い為、72時間という括りはあまり意味がない)。

 妊娠回避率はヤッペ法と理論上は同等、副作用市販の風邪薬程度で、ほぼ無いと言っていい程です。
 現在のノルレボは1錠一回のみの服用になっています。

 海外では別銘柄・ジェネリックが複数存在していて、製品名としては「プランB」「アイピル」etcといったものがあります。

3)おまけ・抗黄体ホルモン剤による緊急避妊

 前2項の黄体ホルモン剤・ヤッペ法は排卵抑制や移動制御での妊娠回避なのに対し、こちらは内膜への作用で妊娠を回避するタイプで、避妊失敗からの効果が得られる時間がより長くなりました(5日後まで)。

 抗黄体ホルモンとは、その字の通り黄体ホルモンの働き(この場合内膜を維持する力)を阻害する力があります。

 日本ではもちろんまだありません。海外での製品名としては「エラ」がそれにあたります。

4)更におまけ・銅付加IUDによる緊急避妊

 子宮内に挿入して着床を阻害するタイプのものを緊急的に挿入することで緊急避妊になります。今現在では失敗後5日までなら挿入可能、成功率も100%近いとされているそうですが、挿入タイプは子宮口を開けて挿入する物の為事前の準備が必要で、性感染症がないことも確認しなければ危険です(子宮内に入ってしまう)。

 性感染症検査が日常化していない日本で、これを緊急避妊として使うというのはなかなかに現実的ではないとのことです。(それでも推し推しの先生はいるようですが…)

あくまで緊急であるということ

 よく勘違いをされる方がいらっしゃいますが、緊急避妊とは文字通り失敗ケースの対応をする為の避妊法です。例えば「あとで緊急避妊すればいいや」と生挿入中出しをして事後に服用するというのは、あまりに現実的ではありません。なぜなら……

成功率は「外出し」と同じくらい

 無理矢理値として換算するとそのくらいになるということです。緊急避妊は絶対ではありません、更には時間が過ぎれば過ぎるほど、妊娠回避率は下がっていきます。
 そんなリスキーな避妊法にいつも頼ることができますか?
 (常時外出ししている人間にとっては同じコト、かもしれませんが……)

服用後は出血を待たなければ妊娠が回避できたかどうかわからない

 日数を取らなければ妊娠検査薬は使えません。
 消退出血があれば妊娠は否定されたことになります。
 どちらで確認できるも、飲んだその場で結果は得られませんので、普通に考えれば「結果がわかるまで不安でセックスどころではない」でしょう。
 また服用後の方が却って排卵が起こる場合も多く、妊娠のリスクが高くなる場合があるとも言われています。

 上記の点から緊急避妊はそもそも常用できる避妊法ではないのです。

そもそも日本の緊急避妊は驚くほどの高コスト

 新しいタイプの緊急避妊ノルレボで15,000円~30,000円程度、ヤッペ法での処方でも平均5,000円~6,000円程なので、毎回にこのコストを掛けられる人間はまずいません。

 (前述の低用量ピルでも代替ができる話を知っていれば、低用量ピルの処方を求めて病院に行けば1シート分の2,000円~3,000円でヤッペ法ができることにはなりますが、いざ実行しようにもどれを何錠飲めばいいのかという知識が必要なので知らない方には難しいですね)

 日本はとても特異で、海外ではおおよそ10分の1程度。
 また、副作用が強いヤッペ法での緊急避妊はほぼ淘汰されていますので、安い方高い方なんてことをやっているのは、日本だけです。

 なぜそんなに高いか……についてはさておくとしまして。

海外では薬局で買える

 更には、アクセスの問題があります。

 海外の国の多くでは、この緊急避妊専用の「ノルレボ」や「エラワン」などは、薬局で購入することができるのです。女性センターのような施設があって、そこに行けば配布してもらえる国もあります。

 1,500円~2,000円程の価格で身近に購入に行けるのであれば、これほど安心できることはありません。
 逆に言えば「市販化をしても大丈夫なほどに安全な薬である」ということです。

 日本はというと、基本的に産婦人科限定の処方になっています。
 これはわざわざ「そうしてくれ」と願った組織があったということのようです。

 基本的に処方薬は、一部を除いて処方科目の垣根関係なく処方することができます。(内科の先生が点眼薬を処方することももちろんできる)

本当に大丈夫? と心配な方へ

 打診を受けまして、友人とサイトを作成しました。

 → 「緊急避妊薬ノルレボの市販薬化について全力で答えるQ&A

 緊急避妊薬ノルレボについて、心配なこと、よくわからないこと、反対派の意見についてなど、実際にtwitterなどで見た言葉についての答え、説明をわかりやすいイラスト付きで解説しています。

 目的は「市販化について」ですが、緊急避妊薬そのものへの多くの疑問について、お答えがご用意できていると思います。

緊急避妊へのアクセス改善を求める人達がいる

すぐに必要な時がある。緊急避妊薬ノルレボを市販薬に!

 海外では薬局で購入ができます。そのくらい安全なものなのです。しかし日本は産婦人科限定処方な上に、数万円。早ければ早い程効果が高いものを、この障壁なわけですから、日本の女性は不遇と言って差し支えありません。

 多くは書きません、私も賛同しています、どうか同じ女性の活動を知って下さい。

もっと知りたい!場合は……
緊急避妊薬の働きについて考える」 緊急避妊薬の具体的な作用についてアニメで説明します
知っておきたい「ピルの常識」」 ピルの全体像を、成分から理解してもらう為に
色々なピルを紹介していくよ (2)」 具体的な銘柄等について

第一回 「日本で選択できる避妊方法 (1)
次回 「日本で選択できる避妊方法 (6) 色んなコトのウソホント

 


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