緊急避妊薬の働きについて考える

書いた人: 妻

 こんばんは、瑞谷です

 このブログでも、緊急避妊についてのエントリをいくつか書いてきました。
→ 「日本で選択できる避妊方法 (5) 緊急避妊のこと
→ 「緊急避妊薬「ノルレボ錠」を市販化するお話

 また、キャンペーンのフォローサイトも作成しました。
→ 「緊急避妊薬ノルレボの市販薬化について全力で答えるQ&A

 Q&Aは、「緊急避妊薬ノルレボそのもの」の情報サイトとしては、とても内容の薄いものになっています。その代わりに説明を費やしているのは、運用そのものへの懸念です。

 今日は緊急避妊そのものについて、一緒に考えていけたらと思います。

緊急避妊薬の種類

 皆さんもうよくご存知かと思いますが、緊急避妊薬にはいくつか種類があります。

緊急避妊 ヤッペ法 (混合ピルの転用)
ノルレボ (レボノルゲストレル 1.5mg)
エラ (ウリプリスタール酢酸エステル 30mg)

 混合ピルの転用である「ヤッペ法」と、レボノルゲストレル 1.5mgの「ノルレボ」では、理論としては同じです。ですので、基本どちらも確率的には同じものと思ってよいでしょう。

 エラに関しては、日本ではまだ認可がされていないので、今回のお話からは除きます。(そもそも作用機序が違います)

 ヤッペ法とノルレボの違いがわからないという方は「知っておきたい「ピルの常識」」をお読み頂ければと思います。

緊急避妊薬が事後避妊できるしくみ

 作用としては現在、

・排卵の抑制
・輸卵機能の抑制
・着床条件の喪失

 という三つの作用で妊娠が回避できると考えられています。
 というのは、緊急避妊の作用としては今現在も様々な議論がなされており、細部までの正確な機序がわかっていないのです。
 大まかには判明していても詳細についてよくわかっていないというのは、緊急避妊を含めた医学、栄養学、自然科学……多くの分野で散見できますので、それ自体は特別なことではありません。

排卵の抑制

 黄体ホルモンは排卵を抑制します。
 ヤッペ法もノルレボも、黄体ホルモンによる作用です。
 緊急避妊薬の服用で、排卵が抑制できる時間は7日間前後。

輸卵機能の抑制

 黄体ホルモンの緊急避妊薬を服用すると、卵巣から排出された卵子が、その先の卵管を通る速度がとても遅くなるか、または止まってしまうと言われています。
 卵管は、移動する卵子や受精卵へ栄養を届ける仕事も担っていますが、移動が止まってしまうと新しく栄養も届かなくなってしまい、卵はそのまま身体に吸収されることになります。

着床条件の喪失

 服用の時期によっては、排卵の前に内膜がはがれ出血が起こることがあります。
 その後排卵抑制が途切れ、排卵が起きたとしても、内膜が薄い状態では着床ができません。

アニメで見る緊急避妊

20時間後くらいに排卵がされてたかもしれないケース

 排卵より前に緊急避妊薬が服用できると、予定していた排卵は抑えられます。
 その期間は約7日間。その間に精子は息絶えその後に排卵をしても受精は叶わず妊娠は回避されます

 時期により内膜の剥離(消退出血)が起きますが、必ず起きるというわけでもありません
 自前の黄体ホルモンが多い時期には、服用した黄体ホルモン分下降しても、自前の分があるのですぐに剥離は起きません。

 この現象を時々「無理矢理出血させる薬」と解釈されている人も見ますが、「聞きかじっただけの自称情報ツウの人」という印象ですね。

間に合わず排卵してしまったケース

 服用すればゼロコンマで効果が現れるわけではないので、いくら急いでも間に合わず…ということもあるでしょう。
 やっと服用できたけれど既に排卵が終わっているケースもあるでしょう。
 精子が卵管膨大部へ到達する時間も明確ではないので、どうしてもフォローが間に合わないケースが存在すると思われます。

 いくら最も早い段階で服用ができても、そのようなケースがある以上「緊急避妊は絶対ではない」のだと、私は考えています。

排卵してしまった場合にも有効

 そのように排卵してしまった場合も、まったく効果がないわけではありません。
前述の

・輸卵機能の抑制
・着床条件の喪失

 の二点で、まだフォローができる可能性があります。

精子の辿る道

 精子が卵管膨大部に辿りつくのは、はっきりとはわかっていないということなのですが30分~1時間半程度掛けて到達するようです。

 エッチな同人界隈では、射精された精液が子宮内にどぷどぷと直接的に注ぎ込まれる描画を散見しますが、実際はそんなことには絶対になりません。
 というのは、子宮の入り口は基本的に埋まっているので液体が流れ込む余地がないのです。

 膣内に射精された精液は子宮の入り口付近に貼りつき、精子自身は自分で、子宮頚管と呼ばれる入口の粘液へ侵入します。

 子宮頚管粘液の増粘を、緊急避妊薬の作用として説明するページもありますが、そして実際に服用後は増粘が認められるのではないかと予想できますが、それは服用後だいたい6時間くらい後のことなので、直後に服用をしたとしても増粘による侵入阻止ではほとんどが間に合いません。
 (そういったページは緊急避妊薬とデイリーピルを混同している可能性がありますね)

 子宮への侵入に成功した精子は、その時点で千個以下に減っているとも言われています。
 精子は迷うことなく排卵している側の卵管へ向かい、奥の卵巣を目前にする卵管膨大部を目指します。

 実際にそうして卵管膨大部まで到達し、卵子に遭遇できるのは数十個から数百個とも言われます。
 そして精子の寿命は、3日~7日程度と言われており、その間卵子が現れるまで上記アニメのように、卵管膨大部あたりで待機をしているようです。

卵子の辿る道

 排卵された卵子は卵管膨大部に降り立ち、卵管を通って子宮に向かいます。
 その序盤で精子に遭遇出来ない場合は受精が成立せず、多くは子宮内膜と共に排出されます。

 卵子の寿命は12時間~24時間とも言われていますが、実際に卵子が受精可能な時間は、それより短く6~12時間くらいではないかと言われます。

 受精可能な間に精子と遭遇でき、優秀な精子と共に受精卵に進化できると、そこから4日~6日程掛けて細胞分裂を繰り返しながら卵管を移動し子宮に向かいます。
 逆に言うと、その分だけ着床までに時間があるわけで、その間に緊急避妊薬により内膜の剥離が起きれば、着床はしません。

 子宮に辿り着くと、子宮内に少し停留し、バランスが整うまで様子を見て着床、子宮内膜に貼り付きます。
 子宮内膜の状態によっては着床できず、そのまま受精卵(胚盤胞)は内膜と共に排出されます。このタイミングは必ず合致するというものでもないようで、女性は割と頻繁に、自然に「受精卵と内膜を一緒に排出しています」
 受精卵ができたからといって、必ずしも着床に成功するとは限らないのです。

 ここまで、約1週間~10日程と言われています。

排卵するタイミングは様々

 実際のセックスの現場では、いつ排卵されるかわかりません。
 セックス前に排卵があったかもしれませんし、セックス後何時間かのちに排卵されるかもわかりません。

 ですから、すべてのケースで「できるだけ早く服用する」ことが、一番重要になります。
 生理がいつだったから排卵はもっと後だろう~……などという予測は、無意味に近いのです。いつだから大丈夫だとか、可能性が低いからとか考えている間に一刻も早い服用をすることが、なによりなのです。

 

確率のお話

緊急避妊薬ノルレボの市販薬化について全力で答えるQ&A」で使っているこの「妊娠回避率の変化」ですが、少し解説が必要です。

無避妊の妊娠率は約8%

 これは、すべてのケースを含めた「そのセックスによる妊娠率」です。
 無避妊のパールインデックスは85、これは一年間ずっと無避妊でいると妊娠している確率が85%ということですので、パールインデックスとはそもそも意味合いが違います。(よく混同されています)

 いうなれば、時期によって妊娠する確率は違います。それらすべて合わせた確率であり、「8%のクジを引いている」というわけではないのです。

妊娠回避率とは

 そのままだと妊娠していた場合に、緊急避妊薬を服用すると回避することができます。
 左側の縦軸の表記は、その確率を現したものです。
 無避妊で本来100人中8人の人が妊娠していた場合が、服用により2人に抑えられたとすれば、妊娠回避率は75%になります。
 グラフの通り、直後の服用では100%に近いことも読み取れます。
 「72時間以内」と呪文のように各地で書かれているこの時間は、その時点でもう「妊娠回避率50%を割っている」ということも読み取れると思います。

 これは要するに「そのままだったら妊娠していた場合でも、半分の確率で妊娠回避が出来る」……72時間以内なら大丈夫と言えるのは、よほどのギャンブラーでしょう。

よくわからないけど結局どのくらいなの?

12時間以内の服用……0.5%以下
24時間以内の服用……1.5%以下
36時間以内の服用……1.8%以下
48時間以内の服用……2.6%以下
60時間以内の服用……3.1%以下
72時間以内の服用……4.1%以下 (妊娠率)

 単純に値にすると、4%なんて「当たらないかもしれない」と思われる数値でしょうか。
 そういう方はひょっとすると、「妊娠するかもしれない確率は8%です」と言われると、「あれ、案外低いな?? 大丈夫かも??」と、思ってしまうのではないでしょうか。

 確率とは、自身の値だけで算出されているものではありません。沢山の人を集計した、ただの結果としての値です。クジを引いてこの確率で「当たるかどうか」をやっているわけではないのです。

 今が「妊娠するルート」かどうかなんてのは、誰にも確認ができません。8%に入っていないかどうかなんて、その時点では誰にもわからないのです。

 「もし8%に自分が含まれていたら、72時間の時点で飲んでも50%の確率で妊娠を引く

 ちょっとズルい書き方ですが、そのくらい「早い服用が鍵」なのです。

確率を考えると常用だっていいんじゃないか?

 ひょっとするとそう思われる方が、いらっしゃるかもと思います。
 ヘタなコンドーム使用よりも率としては高いのでは、と考える方もいらっしゃるのでは。
 実際にそういう側面も、まあ、ないことはないというか……。

緊急避妊薬のデメリットは、絶対ではないこと。

 アニメーションの部分で「絶対に回避できないケースが存在するだろう」ということを書きました。
 まあでも、普段から生挿入の外出しなんかやっている人間には、夢のようなお話に見えるのかもしれませんね……

次の手がほぼ無いこと。

 あるとすれば「IUD挿入による緊急避妊」くらいですが、これは一般の人はまず無理です。
 そしてそもそも、緊急避妊薬で「避妊ができた」ということを確認できるのは、数日後~数週間後なのです。その時には既に打てる手がありません。

 緊急避妊での「失敗」は、目には見えません。黙って失敗し、出血が無いまま、妊娠検査薬での判定を待ちます。これはとても大きなデメリットです。
 目に見えないのはデイリーのピルも同じですが、あちらは「飲み忘れ」が目に見えてわかります。

 コンドームによる避妊のメリットは、ちゃんと使えば避妊率は割と高いということと、失敗が目視でわかるケースが多いことです。
 失敗した! と気付いた時に、次の手が打てる。これはとても大きなメリットです。

そして、連続服用ができないこと。

 いえ、実際には、できます。緊急避妊をした2週間後に不測の事態で再度緊急避妊をせねばならなくなった……というケースでは、基本的には服用が推奨されています。
 しかし、大博打をやった後に、更にもう一度大博打を任意でやれる度胸のある人は、そうそういないでしょう。そしてその確率は、一回目よりも高くなる可能性さえあるとなれば……

 連続服用はできないというよりも、実際にそんな運用をしようと思う方がどうかしている、と言うべきですね。

想像の中の問題と、現実。

 緊急避妊薬そのもののお話をしてきました。

 SNS上では、一部の人が「乱用されるから反対」「健康上女性に負担が掛かるから反対」というようなことを懸命に表明される場面を見掛けます。
 そういう方々の声は、ある側面では正しくも映り、しかし根本的には大きな間違いを踏まえているとも思っています。

 乱用のお話はQ&Aでも散々書きましたが、無知(聞きかじった知識だけで知ろうとするつもりもない)ゆえに、「実際にそういう使い方がされるケースはごく少数発生する」と思います。そういうケースを発生させる人間は、「元々それ以下の人間がただランクアップしているだけ」になるのではないかと考えます。

 生挿入外出しの人間が、ある日を境に真剣に避妊について取り組もうと思うでしょうか。
 一般の平均的な人が、初めてそのような薬剤を使用する時に「聞きかじった適当な知識」だけで飲もうとするでしょうか。

 あるいは真剣に避妊について考えてきた人間が、うわべだけのいい加減な情報を元に、緊急避妊を常用しようと転換するでしょうか。

初めて買った市販薬の感冒薬などの裏面を読まずに適当な錠数飲む人間には、どんな形で何を言っても届きはしません。

 それを心配することは、私には「包丁を販売したら殺人をしたり、意図しなくても間違えて人を刺してしまう人が出るから、包丁の販売はダメ」と言っているのと、大差ないように思うのです。


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