セックスは「してはいけないこと」なのか (1)
セックスは「してはいけないこと」なのか (3) の続きです。
部屋に入ってきた妹は、ベッドの上のトライディオールを見つけるやいなや、
「これもしかしてピル?」
ごまかしてもしょうがないと、「うん」とだけ返事をすると、妹は
「そこまでしてしたいん??」
と言いました。
私はなんと答えたのか……なんだかその言葉がショックであまり覚えていないのですが、いやコンドームだけでは不安でしょとか、ちゃんとできるならした方が良いとか、そういう意味のことを言ったような気がします。
ふーん、と適当なことを言いながら妹は出て行ったような。
セックスの為に薬を飲む。何も知らない人間にとっては「そこまでしてセックスしたいのか」という言葉は、日本では割とポピュラーな感想なのかもしれません。
妹とは、決して仲が悪いわけではありませんでした。
これ以降?「彼氏とのエッチ中に外に出されるとベタベタして嫌だから口に出してって咄嗟に言った」だとか、「手をぎゅっと握ってしまうから手が痛くなる」だとか、エッチ的な話を振ってくるようになった気はします。
今思えば、もっと踏み込んで自分の話をしておれば、ひょっとして彼女の人生も何かが変わっていたのかもなんてことを思います。
私達がどんな気持ちでセックスしていたかとかは、なんとなく伝わっていたように思いますが、具体的に自分の言葉で熱弁したことはありませんでした。ただ「私もそんな風にできたらいいな」というようなことは言われた気がします。
妹のようなモデルである「セックスは当然のようにするんだけれど、そう言いつつもそんなに重要な扱いではない」「なので避妊は割と適当で、コンドームを使うこともあれば気分や状況によっては生挿入外出しもある」は、スタンダードと言えばスタンダードで、多くの恋愛シーンで見かけるスタンスのような気がしています。
でも、満足度高くしようと思うセックスも、そうでもないけどとりあえずしたいからするセックスも、どちらも同じセックスであり、妊娠する可能性は同じです。
「私達はそんな真剣にしてるわけじゃないから妊娠する可能性は低いはずだわ~」なんて戯言を、運の神様が聞いてくれるわけではないのですから。
でもなぜか、そんなふわふわしたセックス観の人の方が、むしろ妊娠する可能性の高い行動をしているような気がして、そしてちゃんとした避妊をしようとする人を「どうしてそこまで? ププッ」と嘲笑っているようなイメージがあります。
なんだか、おかしいことですね。
でもなぜか皆、そんなことを思いながら、嘲笑いながら。月経がこないことに不安を感じることが当たり前、自分がしくじった所為だ、セックスした自分が悪いと思いながら。そしてまたセックスをする。
そういう人は言います、「妊娠が嫌ならセックスしなければいいのに」と。
日本のセックス観、男女観、恋愛観は、ものすごく矛盾しています。
セックスは「してはいけないこと」なのか (5) に続きます。