第1回 「いい大人のための性教育 (1)」
第2回 「いい大人のための性教育 (2) 誰の為にする?」
第3回 「いい大人のための性教育 (3)」
自分の性について知ること、自分を大切に思うこと、その延長で相手を大切にすること、そして自分の為にセックスをすることについて書いてきました。
相手を大事にする上で、殊に男女のカップルの場合には「自分の身体と相手の身体の違い」を知っておかなければなりません。その点、同性カップルであれば「身体」については自分のソレがあるのである程度知っている分有利な気がします。
もくじ
男女の身体の違い
身体的な差については、小学校や中学校での保健体育であったと思いますけれども……
■ 女性の方が曲線的な身体つき、男性の方が直線的な身体つき
(脂肪量・筋肉量の差)
■ 体毛や匂い
それぞれのホルモン量の違いから、体毛量はどちらかというと男性の方が多い傾向にあり、体臭も男性の方が強い傾向にはある
体感的には
■ 皮膚の硬さ
夫にずっと触られ続けると、ちょっと皮膚表面がヒリヒリしてしまうことがあります。
また髭の生える周辺は触れるのがちょっとだけ辛いですね。
■ 体力的にも強い
やはり瞬間的な力の強さ、タフさは全く敵いません。
■ 体毛がちくちくする
セックスしていると夫の体毛がチクチクくすぐったいな、痒いな、気になるなということがあります。(単に自分の毛には慣れているだけの可能性も)
脳の性差
よく「女性は男性はこんなことが得意」という話がありますけれども、実際には検証の浅い論文から派生伝播した最早俗説と言えるもののようです。
ナショナルジオグラフィック日本語版サイトにて、興味深いコラムが連載されていました。
東京大学・認知神経科学、実験心理学 四本裕子准教授への連載インタビュー第五回
『「男脳」「女脳」のウソはなぜ、どのように拡散するのか』
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/17/020800002/021400005/
結論を言うと、四本先生は「男女差というものは絶対にあると思う」という(個人的な)前提を入れつつも、現状の結論としては「具体的に何が違うのかまでは明確にできていない」ということです。
女性の方が脳梁が太いという話も、データ数が合わせて14人、うち女性は4人しかいない論文から勝手に枝葉が付き、またその「女性の方が脳梁が太い」という結果も、その後誰も再現できていないとのことです。
「相手方の性別はこういう傾向にある気がする」程度の認識は、皆さんそれぞれ持っているかもしれません。
でも、自分の大事なパートナーのことを「女性だから」「男性だから」→「こんな風に考えているだろう」という認識で内面を捉えようとすれば、途端に「その相手を個人として見ていない」ことになってしまうのではないでしょうか。
実際、私と夫の得意なものや好きなものは、世間一般の女性男性の枠に収まっていることばかりではありません。相手を知るために、何度も何度も対話を重ねてきました。
女性が妊娠をする側である
何度も色々な所で書かれている文句ですが、妊娠をする側の性というのは今の所基本女性であり、また「自分の意識で妊娠をする・しないを選べない」のがヒトの生態です。
社会的なセキニンが~とかそういうのはとりあえず抜きにして、その妊娠を背負って受けて立つのはやっぱり女性です。こんな書き方は男性にとてもとても失礼を承知で書きますが、万が一女性が妊娠してしまっても、男性は連絡を絶ち色んなものを変え無視すれば逃げおおせる可能性があります。
大半はそういうことをしない誠実な男性であっても、妊娠してしまったその後を代わりに受けられるわけではなく、全く同じ思いを共有するのは本当に難しいことなのです。
選択権は女性にあってしかるべきだけど
基本的に「セックスはふたりですること」なので、「子供は今は要らないので避妊をしよう」という場合については、どういう避妊方法を選ぶかについて二人でよく話し合い、二人で決定したい所ですけれども、やはりそこはお互いの不安解消を念頭に置いての話し合いであるべきだと思います。例えば……
彼女「コンドームだけでは不安…」
彼氏「コンドームでいいじゃん? 手軽だし安いし」
あるいはセリフが逆になっても結構です。
彼女「コンドームでいいよ~、手軽だし安いし私破れたことないよ」
彼氏「でもコンドームだけでは不安だな…」
コンドームの物理的遮断の場合、破損すれば即妊娠の可能性と背中合わせというリスキーさを抱えています。でも「手軽で良いじゃん」という費用対効果を重視しより不安な方の思いを無視した結果、破損してしまった場面はどうしましょうか。
でもその方法についてはきちんとふたりで話そう
上記の場合、選択できる可能性としては一応日本でもいくつかあります。
・そもそもコンドームだけでの避妊に頼らない
→低用量ピルを併用する。あるいは低用量ピルのみでも良い(ただしお互いが性感染症検査をしていること、お互い以外でのセックスをしないことが前提)
・コンドームの破損が発覚した時の為に緊急避妊薬を用意しておく、あるいは処方してくれる病院を先に調べておく
→安価にということなら輸入代行サイトが存在する。
国内処方にこだわるなら開業時間を確認しておく(週末深夜などになると翌週明けにしか処方してもらえないということにもなりかねない)
もしくは病院で先に処方しておいてもらう(めちゃ高いけど)
日本は「避妊について話す=コンドームを使うかどうか」でしかなかった
日本で選択できる避妊方法は一応いくつかあります。
詳しくは「日本で選択できる避妊方法(1)」をご覧頂ければと思いますが…
日本で定番の避妊方法というのは、長らくコンドームが君臨していました。
今も増えはしたものの、状況としてはさほど変わってはいません。
つまり、日本での「避妊について話し合う」とは、
「コンドームを使いましょう」 「そうしましょう」 (終)
という程度の話でしかなかったのです。
だからでしょうか、あるいは元々の土壌だったのでしょうか。
セックスを開始するにあたり「なんとなく」「多くの場合男性が用意していたものを」「雰囲気壊さず使う」というような、「暗黙の了解としてのコンドーム使用」が定着してしまいました。
誰が悪いということではなかったのかもしれません。
もしかすると「男性に避妊の主導権を持たせるべき」と思う人がいたのかもわかりません、男尊女卑が強かった日本ですから……
あるいは、コミュニティによっては「生挿入でも良いけど」「射精の時には引っこ抜く」という謎のジョーシキが定着している人もいらっしゃるかもわかりません。
話し合うべきは「妊娠するか否か」だけではない
そのカップルによって状況は様々なので、ピルだけで大丈夫という人達もいれば、コンドームでないと困るという人達もいます。
セックスの頻度や、性感染症の有無、今後感染する可能性、
妊娠すると困る度合い(というのも変な話ですが)、
方法として何がフィットするかという現場の問題、
更に日本においては悲しいかな金銭面、
などを考えて話し合わなければなりません。
パートナーが浮気しそう(っていうかしてるのがわかってる)
という人に、低用量ピルだけの避妊を勧めるのはとてもリスキーです。
なぜならそのパートナーは、何人の人とセックスをしているかわからないし、もちろん明言もしないでしょうから、コンドーム無しでの避妊は性感染症をうつされる可能性があります。
浮気はしないし性感染症にも罹っていないけど、遠距離恋愛でセックス頻度が低い
という人に低用量ピルは、なかなかに難しいものがあります。
というのは、重度の月経痛や月経量過多などに低用量ピルは有用ですが、例えば3ヶ月に1回しか会えないというような付き合い方の場合、その3ヶ月間は月経の為だけに飲むことになるので、よほどの意識でないときちんと正しい時間の服用生活が続けられない可能性があります。
また金銭面の問題も、頻度を考えると誰がどの程度担うのか?というシビアな話になってしまいます。
男性におまかせしたいお姫様はどこ?
男性がリードしてくれるべき、コンドームは男性が買うべき、言わなくても気遣ってくれるべき、男性がおごってくれるべき……私より少し上の世代はそういうことを言ってはばからない年代だったように思いますが、今はもうそんな時代ではありません。
当時は女性が「セックスをさせてあげる」という、ある意味強かさがあったとも取れますが、それを言える人間は一部だったでしょうから、多くは「体の良いお姫様扱い」を下地にした「か弱く都合よい男性に守られる女性像」だったのではないかと思います。
「守られる」ということは、自由も権利も存在しないということ。誰かによしよしと守ってもらう代わりに、自分で選択はできないということ。でもそんな時代はもう終わろうとしています。
「男女」であろうと、「男男」であろうと、「女女」であろうと、それ以外であろうと、あくまで「人と人との付き合い」「パートナーとしての付き合い」を考えて行くことが「自分と相手を大事にすること」になるのではないでしょうか。
参考リンク:
避妊について話し合う文化
第3回 「いい大人のための性教育 (3)」
次回「いい大人のための性教育 (5) 自分を大切にするために」