いい大人のための性教育 (2) 誰の為にする?

書いた人: 妻

第1回 「いい大人のための性教育 (1)

 

「性別とは何か?」を問い始めると、性別の境目や自分自身の性別についてがあやふやになる、というお話を書きました。

 そしてそれは、嫌な書き方をしますけれども、これそのものを読んで「何を言っているのか意味が分からない」という人も、恐らくは少なからず存在するのだということも考慮しなければなりません。

 つまり「自分は男だから男だし、他人もそうだ、それ以外にあるか」というような価値観がすっかり固まってしまっていて、いやそうではないよ、そうじゃない人も沢山いるし、もっと自由だよという提案をしても受け入れられない層が一定数存在するということなのです。

 そういう方々を非難するのは簡単です。上手く懐柔というか、もっと頭柔らかにできれば、こんな性別のくくりなんていう些細なことへの誹謗中傷で傷ついたり悩んだりする人が、もっともっと少なくなって皆幸せになれるのに……と思います。

そもそも人は何の為に生きるのか?

 私は、究極的に言えば『自分が楽しくなる為に生きる』のだと思っています。

 昔の漫画(アニメ)になりますので、お若い方はご存知ないかもしれませんけれども、大変有名な漫画家・藤島康介さんの作品「ああっ女神さまっ」の序盤で、女神であるベルダンディが言ったセリフがとても印象に残っています。うろ覚えなので正確ではないかもしれませんが……

「本当に強い人って、どんな時でもどこかに楽しさを見つけられるんじゃないかしら」

 これは、決して誤解のないように書きたいのですが、どれほどしんどい時にも楽しさを見つけるべきだとか、そういうことが言いたいのではありません。なにせ現代の日本人は労働過多ゆえそんな人にまで「楽しさを!見つけて!」なんて、鞭を打つも同義なのですから。

 生きることそのものは、働いて社会的な生産をし、通貨を得て、衣食住を整えて、日々生活していく……とてもとても面倒臭いです。

 でも例えば、ただ出されたごはんを食べ、受け身なだけの娯楽を享受することが、果たしてとてつもなく幸せだと言えるのでしょうか。

 同じように、人との関わりもとてつもなく面倒臭いです。
 気を使ったり使われたり、傷つけたり傷つけられたり……

 でも、どちらも、案外楽しい。楽しい所を沢山見つけられる。もちろん嫌な所もあるけれど。
 自分に合う仕事を見つけられたら、生活をする為とはいえ部分的にでも楽しい所があったり、遣り甲斐や達成感を感じたり。

 気の合う人に出会えたら、気を使ったりする部分もあるけれどやっぱり嬉しくて楽しいし、前より仲良くなれた! と思う瞬間はなんだかドキドキします。

そうして人は恋をする

 相手に対する色んな感情があって、そのうちのひとつに「恋愛感情」というものが存在します。でもその恋愛感情だって、必須でも絶対でも正義でもないのです。

 感情の発生については、私は専門家でもなんでもないのでよくわかりません。でも自分自身の言語ベースより下の所から湧いてきて、時に自分の心さえ揺さぶる割とやっかいな存在だとも思っています。

 生物的には危機回避判断の指標のひとつかもしれないし、生存戦略かもしれない。それもまた多様性なのでしょう。

 そうして、人間は雌雄異体(個体差・多様性を発生させる為、生殖する為に二種の生殖器が別々の個体に備わっている)なので、多くの人間の方は人間に恋をするのだと思います。
 (たまに異種や無機物に恋をする人間も発生しますがそれもまた多様性と言える)

 恋愛もまた娯楽と言えるし、人と人とのつきあい方で最も他人と深く触れる人間関係とも言えます。

そうして人はセックスをする?

 生物的に「繁殖行為」というものはとても大切なもので、とても原始的・本能的であり、更にはこの現代ではセックスそのものが「愛のカタチ」とも認識されているので、多くの恋愛シーンにおいてセックスは切り離せない存在になっています。

 だから「妊娠目的ではないセックスが必要」だと、つまり「恋愛にセックスが含まれている」と認識されています。(ロマンチック・ラブ)

 しかしそれもまた「そういう文化を経てきた」という意味合いだけで、実際は「恋愛」に「セックス」が内包されているわけではありません。

 技術的進歩があれば「人生において、更には生殖からすらセックスを独立させる事も可能だ」ということなのです。

ロマンチックラブに囚われている

 「純粋な恋愛」→「セックス」→「結婚」→「妊娠」→「お互いが生涯唯一の愛を誓い合う」

 この流れを見て「それは正しい素敵なことだわ」と思われるならば、それは「ロマンティックラブ・イデオロギー」に囚われていると言えるのかもしれません。
(イデオロギーとは、この場合社会の観念とか通念とかを指して、みんな当たり前に思ってて当然じゃん!正しいじゃん!みたいな意味)

 つまり、正しい純粋な恋愛をしてセックスをして結婚をして愛を誓い合って…ということが、最早今の現代では「まっとう」と認識されていて、そこから外れればいとも容易く「あの人はおかしい」というレッテルが貼られちゃってるということです。

 例えば「○○歳にもなって、恋人も奥さんもいないなんて、きっとどこかおかしい人なんだ」とか、「イケメンさんなのに彼女がいる素振りがないので実はホモなんじゃないか」とか……
 実際、具体的な人を指してそんな風な事を言う大人に、子供の頃からよく遭遇しませんでしたか。

 そしてそこには、「男・女の恋愛が大前提」ということも、含まれていたのではないでしょうか。

誰の為にセックスをするのか

 セックスが人間の人生において独立した、個々に属したものだと考えると、それはおのずと答えが出てきます。それはつまり、

「セックスは自分の為にする」

 今更何を言うのだという程度の、ごくごく当たり前のことです。
 セックスは「生殖行為」でもあるけれども、同時に、技術的な発達により「自分の人生を楽しくするアイテムのひとつ」とも言えます。

 そしてそれは、男女の間でも、男性同士の間でも、女性同士の間でも、そしてそれ以外の間ででも同じ事が言えます。

 自分の人生において「誰の為にセックスをするかをちゃんと理解しておく」ことは、自分を大切にする、自分を楽しくするということに繋がっていきます。

自分の意思で歩き始めるということ

 自分自身が明確になっていれば、例えば「彼に嫌われたくないからする」というような「流されセックス観」もなくなっていくでしょう。
 なぜなら「自分の為にする」のだから、まず自分が気持ちよくならないと意味がないし、でも「相手のことが好き」なら相手のことも大事に思って二人が楽しく気持ちよくならないと意味がなく、二人ともがそのような価値観のスタートでセックスをすれば「どちらか一方が割を食っている感」は生まれないはずです。

 だってそもそも、「セックスは男性の為にあるものではない」のですから。
 あくまで「自分の為にする」「自分の意思でする」のです。

悲しい思いをしている女性へ

 逆に言えば、「自分の意思でしない」ことだって通されるべきです。
 「避妊をしない男性にちゃんとしてと言えない」人がいるのは、「男性の為にセックスをする価値観が土壌にあるから」ではないでしょうか。

 これは女性が悪いとか男性が悪いとか言っても仕方のないことであり、例えば本当にそんなカップルが存在していたとしても、その彼氏側に「ちゃんと避妊具を付けなさい」ということを指導して回ってくれる都合のいい「大人の上の人」なんてものは存在しません。

 その話を聞いた知り合いの人が叱咤してくれる可能性はあるかもしれませんが、そんな面倒事誰が引き受けてくれるのでしょう。私の身近に居たらぶん殴ってあげられる所ですが。

 その意思を整えられるのは、誰でもない、自分なのです。
 そしてそれが通されない時には、恋愛関係がどうこうとかいう次元の話ではなく、レイプ問題になっているはずなのです。

セックスの意味なんて人それぞれ

セックスは神聖なもの」?
愛を確かめ合う行為」?
本当に好きな人としかしてはいけない」?
 そのような意味合いを付けることは個々の自由ですので、そのあたりはお好きにすればいいのです。

 誰とするのもどんなことをするかも自由なのですから。

不倫を許容するのか」?
 厳密に言えば日本では「不貞行為」そのものが法的に罰せられるわけではありませんし、民法自体が貞操を守る義務を明記しているわけではありません。
 しかし「不貞行為を理由に離婚を求める事ができる」ので、間接的には婚外のセックスをすることを「貞操義務を守らなかった」と言えるというだけです。

 ならば、世間の人々は「自由にセックスをしていいよ」と言われたら、皆が皆本当に自由にしてしまうものなのでしょうか。
 そりゃあ一部の人は奔放になるかもしれません。でも、誰も彼も「自分の身体を人に明け渡すことを気軽にできる」というわけではありません。

 ある人は「好きな人を傷つけるようなことはしない」かもしれない。だからパートナーとのセックスしかしないと思っているかもしれない。
 ある人は「基本的に恋人は作らないけれど、いいと思った人とはする」かもしれない。なのでコンドームは手放せないかもしれない。
 ある人は「パートナーとのセックスでは満足できない」かもしれない。その関係性に悩みながらも、他の人としているかもしれない。

 私、瑞谷はというと、今の夫と16年一緒にいて、結婚10年が経ちました。他の男性とセックスをしたことはありません。そもそもそんなことをする意味がないのです。

 

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