色々なピルを紹介していくよ (1)

書いた人: 妻

 こんばんは、瑞谷です

 何回かに分けて、ピルの種類についてを細かく書いていきたいと思います。
 賛否あるでしょうが、個人で輸入ができるものも含めて、違いについての理解・選ぶ手助けになれたらと思います。

もしピルについてを探していてこのページに辿りつき、これがピルについての初めての記事ということであれば、ピルはただテキトウに数錠飲むだけで避妊が出来る薬ではありませんので、必ずピルの飲み方についての以下の記事を読んで下さい。

日本で選択できる避妊方法 (2) 低用量ピルのこと
日本で選択できる避妊方法 (3) 低用量ピルの飲み方
低用量ピルとリスク

 もし経口避妊薬の利用を一度もしたことがないという方は、可能なら産婦人科処方にて「ファボワールorトリキュラーorアンジュ」を処方してもらい、3ヶ月程度服用された後にお好きなものに繋ぐことをお勧めします。

個人輸入について

 私自身は「個人輸入を推奨も否定もしていない」ということを、最初に書き留めておきたいと思います。

 いろんな所で言われている「個人輸入は自己責任」、これは「なにかあっても自分ですべてを担う」という意味ではなく、「なにかあった時にきちんと自分で判断できるように」を意味していると思っています。

 自己責任という言葉に怯んでしまいがちですが、例えば掛かり付けの内科・循環器科などの先生がいらっしゃるのであれば、半年・一年に一回血液検査をお願いすればいいと思いますし、更に信頼できる先生なら事情を話して「個人輸入で飲んでいる」という説明をされればいいと思います。

 ただし飲んだ結果で何がしかの副作用により発病、発見の遅延や悪化などを病院のせいにしてはいけないということです。

 実際問題として、日本の婦人科医からの処方と比較して、何か大きく改善されるか? というと、私個人としては「定期的に病院に行って自分自身で予兆の判断ができるなら大差ない」と捉えています。

 15年ほど処方薬として低用量ピルを服用していましたが、数ヶ月から半年に一回の血圧計測と血液検査で、例えばその合間に発症する血栓をあらかじめ見つけることができたでしょうか。血液検査だけでは予兆なんてものは見つけることはできません。

 血栓症発症で、婦人科医がすぐに対処できるでしょうか。どちらかといえば循環器科、それを含む内科の方が症状としては合っています。

 ちなみに、飲み忘れ等の服用ミスにより万が一妊娠してしまったとしても、婦人科は特にフォローをしてくれるわけではありません。妊娠継続が不可能なら堕胎手術に移行するだけです。

 あくまで個人的な感想ですが、日本国内は「婦人科医処方」にものすごく期待をし過ぎていると思っています。その自信過剰の処方により、多数の血栓症発症を起こしたのはどこでもない日本の婦人科医達です。

 医師からの処方だから安心、で終わってはいけないのです。
 自分自身もピルについての知識を蓄えなければ、無知のまま飲んではならないのです。

低用量ピルの飲み方については、詳しいエントリがあります。
→「日本で選択できる避妊方法 (3) 低用量ピルの飲み方

国内で処方される低用量ピル一覧

 「低用量ピルについて」のページにて、種類一覧を作っていました。
 この一覧は、現在「日本で処方されている」低用量ピルです。

  分類 / 世代 処方目的・避妊効果・備考
マーベロン 低用量 1相性 / 第3世代 避妊
ファボワール 低用量 1相性 / 第3世代 避妊
マーベロンのジェネリック版
トリキュラー 低用量 3相性 / 第2世代

避妊
この三種類は全く同じピル。
ラベルフィーユは同成分のジェネリック版

アンジュ 低用量 3相性 / 第2世代
ラベルフィーユ 低用量 3相性 / 第2世代
シンフェーズ 低用量 3相性 / 第1世代 避妊
ヤーズ 超低用量 1相性 / 第4世代 PMS・内膜症等の治療(避妊は未認可)
ヤーズフレックス 超低用量 1相性 / 第4世代 PMS・内膜症等の治療(避妊は未認可)
ヤーズと同成分で実薬28錠になったもの。連続服用が目的
ルナベルLD 低用量 1相性 / 第1世代 月経困難症・内膜症等の治療(避妊は未認可)
フリウェルLD 低用量 1相性 / 第1世代 ルナベルLDのジェネリック版
ルナベルULD 超低用量 1相性 / 第1世代

月経困難症・内膜症等の治療
成分的には「避妊効果がある」と断言できない

 ルナベルLD・フリウェルLDは、昔あった「オーソ」という第1世代ピルの認可し直しのようなものです(成分は全く同じ)。
 更にルナベルULDとフリウェルULDに関しては表記の通り、オーソ(ルナベル)からの用量変更、卵胞ホルモンを0.035mg→0.02mgへ減量させたものです。

 卵胞ホルモン(エストロゲン)は、用量により血栓症等のリスク要因になってしまうものの、黄体ホルモン(プロゲステロン)の活動をサポートする為に全ての低用量ピルに使われています。それが減ると排卵を抑える黄体ホルモンの動きが悪くなる為、この用量では他国でも「避妊薬としての治験」はされていないし、日本でももちろん「治療薬」として扱われているので、避妊ができる確証はありません。

日本でも処方されているピル

ヤーズ(&ヤーズフレックス)

プロゲステロン:3mg (第4世代 ドロスピレノン)
エストロゲン:0.02mg

 薬価7,000円のバカ高い超高級・超低用量ピル…なんですが、大半は保険で処方されるので日本の現場での処方価格(というか保険外の実費)はおおよそ2,300円ほど。避妊の為にヤーズを処方してほしい……なんてことを申し出ると、ひょっとすると7千円実費になるかもしれません。

 中用量・低用量という指標は何を指しているのかというと、後者のエストロゲン(卵胞ホルモン)部分の多い少ないを言っています。エストロゲンは冒頭に書いたとおり、強い副作用が由来するもので、この値を少なくすることがピルのしばらくの課題でした。

 エストロゲン量が0.03mg未満の製品を「超低用量」、0.03mg以上を「低用量」と分類するので、ヤーズは超低用量になります。

 そして第4世代ホルモンの登場後、エストロゲン0.02mg以下の超低用量ピルは発売されました。

 しかし、逆に第3・4世代ピルの血栓症発症率が高くなっているという報道が海外でなされました。一時処方制限がなされる国もあったようです。
 リスクを減らすためにエストロゲンを減らしてきたはずなのに、第3・4世代の方が血栓症発症が増える……というのは、思ってたんと違うー!と世界はなったのではないでしょうか。

 元々血栓発症が少ない日本人には、誤差と言えるのかもわかりませんし、そうではないかもしれません。現在までその議論は続いており、はっきりとした原因はわかっていませんが、実際の値としてはやはり発症率が高くなっているようです。アンドロゲン作用の問題では…という推論はされているとのことですが。

 血栓症については、あらかじめ軽度の症状を認知できるかどうかが大切だと思います。
 「低用量ピルの飲み方」ページ「血栓症」項

 何ヶ月かに一回の血液検査だけで血栓症を予見することは不可能ですから、自分自身で勉強して予兆を見逃さないようにする方が得策と言えると思います。

 海外のピルと日本の同種のピルは用量が違うなどということはありません。
 (私も通っていた医師に「日本人向けに少なくしてある」というような説明を一度受けたことがありますが……ヤーズはヤーズだしマーベロンはマーベロンですよ)

 

マーベロン(ファボワール)

プロゲステロン:0.15mg (第3世代 デソゲストレル)
エストロゲン:0.03mg

 マーベロンは低用量ピル認可からしばらく経って、後続的に認可された銘柄になります(本当はスタート時に候補に上がってはいたけれど却下された経緯がある)。
 当時は本当に界隈がにぎわったというか、やっと第三世代一相性が日本で受け取れる!と沸いた記憶が強くあります。(結局私は同シート継続だったのですが)

 当時はrurikoさんにも「綺麗になるピルはどれかと言われれば(消去法的に?)マーベロン」と言わしめた、アンドロゲン作用がほとんどないピルです。
 1相性ピルゆえ、どの錠剤を飲んでも同じである為、生理日調整や飲み忘れ対応等がしやすいです。(ズボラに向いている…)

 アンドロゲン作用が少なく、黄体ホルモン作用が少し多めで、子宮内膜を抑える方がほかのものよりも少し強めと思って良いでしょう。要するに経血量・不正出血が少なくなる傾向にあると言えます。

 黄体ホルモン世代が進むほど活性が高くなり、必要な用量が少なくできる傾向にあります。

 現場価格はファボワール含め、2,000円~3,000円前後でしょうか。

トリキュラー(&アンジュ ラベルフィーユ)

プロゲステロン:0.05mg – 0.075mg – 0.125mg (第2世代 レボノルゲストレル)
エストロゲン:0.03mg – 0.04mg – 0.03mg

 第2世代のピルで、日本で最も処方されているらしいというトリキュラーです。
含有成分である「レボノルゲストレル」は、「緊急避妊薬ノルレボ」に使われています。

 3相性ピルの不便な所は、万が一飲み忘れたりした時に、使える錠剤が制限されてしまう事。
 ホルモン量の増減を考えて対処しないと、排卵抑制には影響ありませんが不正出血が起こってしまう可能性があります。

 第2世代の黄体ホルモンはどうしてもアンドロゲン作用が強く出て、いわゆる「男性化」や、ニキビ、肥満などの副作用が顕著と言われています。少し体毛が濃くなったりとか。その調整の為に、3相性のホルモン量調整が取られています。

 またマーベロンと比べると、内膜を薄くする力がやや少ないと言えます。経血量減少は比較的緩やかではないかと思います。

 デメリットばかりを書いてしまっていますが、ピルには相性が存在します。
 マーベロンがメリットばかりに思えますが、それでもマーベロンが合わない人も存在します。
 その大半は低用量の場合、エストロゲンの多い少ないに過敏に反応する体質かどうかということです。変動させることで落ち着く人もいらっしゃるでしょう。

 ヨーロッパでは、ピルを初めて飲む人には第2世代の1相性ピルを勧めているそうです
 日本には第2世代は3相性しかありませんので、選択肢としてはトリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユの三種になりますね。
 もし「ゆくゆくは個人輸入で、最初は医院処方で」とお考えなら、まず婦人科に行き、トリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユを処方してもらい3ヶ月ほど服用を続け、様子を見てからの個人輸入切替でマーベロンなど好きな銘柄に変更するという方法がいいと思います。

 現場価格はラベルフィーユ含めて2,000円~3,000円前後でしょうか。

ルナベル(ルナベルLD フリウェルLD) 

プロゲステロン:1mg (第一世代 ノルエチステロン)
エストロゲン:0.035mg

 前述通り、オーソの焼き直しがルナベルです。
 「ルナベル」という名の、オーソMと同成分のピルが治療用として認可されたのが2008年。その後オーソM・オーソ777(3相性)が2016年販売中止になりました。
 オーソ自体は1974年に海外で認可されていた、旧世代の低用量ピルと言えます。

 ヤーズと同じように、バカ高い超高級・超低用量ピルとして薬価おおよそ7,000円、保険3割負担にて2000円ほど。

 マーベロンと比べると黄体ホルモン活性が弱く、逆にアンドロゲン作用は比較的強めのピルです。総体的には経血量が少なくなる傾向が強い種類と言えると思います。

 残念ながら、現状同成分の薬剤を個人輸入できるところはないようです。
 海外では製造はされているようですが……Norinyl1+35がそれに当たります。
 逆に言うと第1世代ピルを使うメリットが今はもうあまりないということなのでしょうね。

 ルナベルは前述の通り日本の銘柄なので、輸入自体ができません。

日本では処方されないが比較的ポピュラーなもの

ヤスミン

プロゲステロン:3mg (第4世代 ドロスピレノン)
エストロゲン:0.03mg

 よく「ヤーズとほぼ同成分」と言われていますが……確かに入っているものは同じでも、ヤスミンはヤーズよりもエストロゲン量が多く、その分黄体ホルモンの活性が強くなると言えます。
 つまりプロゲステロン( ドロスピレノン)が3mgと同量であっても、ヤスミンの方が排卵抑制や内膜を抑える力が強くなっているということです。その結果、ヤーズは休薬が4日間、ヤスミンは同じプロゲステロン量でありながら7日間の休薬が取れるということになります。

 ですので、ヤーズとヤスミンを混同してはいけません。
 (ヤーズのエストロゲン用量では、14日間以上の連続服用をしても卵巣の目覚めには4日程度しか掛からない、逆に言うと弱くて7日も抑えていられないということですね)

 エストロゲン0.03mgということは、分類上ヤスミンは低用量ピルということになります。
 日本では処方されません。

ヤスミンのジェネリック版は世界でも色々あるようで、
ドロセチル

他に「ヤミニ」「クリザンタ」といった銘柄があるようです。

マーシロン

プロゲステロン:0.15mg (第3世代 デソゲストレル)
エストロゲン:0.02mg

 一時ピルユーザーの中でも人気があったマーシロン。マーベロンの超低用量タイプとして登場しました。私が飲み始めた頃には個人輸入でマーシロンを飲んでいる人が結構いらっしゃいました。

 マーベロンのエストロゲン量が0.03mgに対して、マーシロンは0.02mgとなっていることから、単純に黄体ホルモンの活性が少し弱くなり、マーベロンよりは内膜を抑える力が弱くなる傾向にあると思います。しかしこの微量の差が身体に変化としてどう現れるかは人それぞれゆえに、複数の容量が違うピルが生産されています。

 少なくても排卵抑制の効果は同じです。飲み忘れ対応もマーベロンと同じで大丈夫です。

ダイアン

抗男性ホルモン剤:2mg(第3世代 酢酸シプロテロン(シプロテロン酢酸エステル))
エストロゲン:0.035mg

 正確には酢酸シプロテロンは黄体ホルモンではなく、抗男性ホルモン剤ということらしいですが、細かい所は私も専門家ではないのでわかりません……ですが避妊ができるのは確かです。

 フランスではそもそもニキビ治療薬として認可。それを避妊転用という経緯だったようです。アメリカはダイアンの認可を渋ったとのこと。その理由が血栓症発症の増加とのことですが、実際問題増加の理由は「第3世代・第4世代の血栓症増加」と同じだろうということです。

 なぜかアジア人に向けて処方されたとか、小柄なアジア人に最も合っているとか一部で書かれているダイアンですが、そもそも最初はニキビ治療薬認可だったはずで、どこからアジアやらが出てきたのか色々探してみましたがよくわからず。(開発のドイツ・バイエルの戦略…?)

 もともとそういった経緯ですから、お肌が綺麗になるピルというフレーズは伊達でないのは当然です。

 他銘柄同成分は「ローラー」や「スーシー」が存在します。

メリアン

プロゲステロン:0.075mg(第3世代 ゲストデン)
エストロゲン:0.02mg

 第3世代・超低用量ピルです。マーベロンとは別の黄体ホルモン剤が使われています。
 第3世代黄体ホルモンの特徴であるアンドロゲン作用の少なさなどはマーベロンのデソゲストレルと共通します。系統としてはマーシロンが近いですね。

 同じくゲストデンを使った、エストロゲン0.03mgの低用量になったものに「ジネラ」という銘柄があります。

 

 他にも沢山の種類のピルが存在します。

 なぜ少しの用量違いが沢山作られているのか? それはひとえに「相性の存在」があるからで、種類の多さは半ば「オーダーメイド的ピルの処方」を可能にする為と言えると思います。

 ですので、飲んでみた、しんどかった、合わなかった! と諦めるのではなく、色々と替えてみる(ただし無知のまま適当に変更では意味がありません)というのはひとつの手です。

 

 次回は黄体ホルモン単剤のミニピル、そして緊急避妊薬について書いていきたいと思います。

次回「色々なピルを紹介していくよ (2)


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2 thoughts on “色々なピルを紹介していくよ (1)”

  1. ヤスミンとヤーズの違い、この記事を読んで初めて知りました。
    勉強になります。

    1. 成分差について触れただけなので、そんな大層なものではないです、すみません(^_^;)
      値と黄体ホルモンの種類を見れば、なんとなくでも方向性が想像できるようにはなると思います。体質によって反応は違いますからあくまで想像なのですが。

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