前回「日本で選択できる避妊方法 (1)」
こんばんは、瑞谷です
今日は低用量(混合)ピルについて、できるだけわかりやすく書いていきたいと思います。
より詳しい情報については、ピルとのつきあい方というサイトがあります。
管理のrurikoさんは日本の女性で、長年このサイトを運営し多くのピルユーザーの力になって下さいました、とても信頼できる方です。
定番の逃げ口上ですけれども、瑞谷は医療関係者でもなんでもない、「よく勉強したピルユーザー」程度の人間ですので、勘違い、間違いにはご容赦ください。
記述の仕方が下手で、実は間違っていてという場合の不利益については、私瑞谷は一切の責任を負いません事、ご了承ください。
そんなよく勉強したピルユーザー程度の人間ですけれども、もし服用中のお悩み・疑問等ありましたら、コメント欄またはメールフォームにお書き下されば、私にわかる範囲でお答えさせて頂きます。
どうぞお気軽に書き込み下さいね。
もくじ
ピルについての基本的なこと
「ピル」は海外でも「ピル」と言います。語としては「錠剤」の総称ですが、英語でも「the pill」となります。
避妊の為に作られた
ピルは避妊の為に開発されました。
日本には「治療用」と称する、治療用として認可されたピルもありますが、そのような認可形態があるのは文字通り日本だけです。
現状でほぼ確実と言っていい精度の避妊ができる方法
日本で選べる避妊法は、前エントリの通り決して多くはありません。
海外には挙げた避妊法以外にも、月一回膣内に挿入するものや、注射タイプなどなど多数の種類が存在しますし、インプラント法も外からのスイッチオンオフができるものが開発されています。
その中で、日本で比較的誰でも選ぶことができる、現状唯一と言ってもいい現代的避妊法は、ピルしかありません。
経血量が格段に減る
生理中の出血量の多さに辛みを感じる女性は、きっと沢山いると思います。
足の間から物理的に多量と言えるほどの血が流れる現象は、きっと男性には経験しがたいことでしょう。
更に不快なのは、それを抑えておく為のナプキンやタンポンの使用です。
月経中にはずっと足の間に生理用品を付けておかなければならない、漏れてないかと心配をしながら生活を送らなければならない、これは経血量が多くなればなるほど鬱陶しい感覚です。
この経血量が、服用することでとても少なくなります。
飲む人自身の子宮内膜の厚さ、飲む種類、飲む年数によって前後しますが、基本的に飲み続けるほど子宮内膜が薄くなり経血量が減ります。
伴って月経痛・PMSが軽くなる
経血量の減少に伴うように、月経痛などが緩和されます。
二日目を中心に痛くて痛くて動けなかったような人も、服用することで「二日目だけちょろっと痛いかな」程度、人によってはほぼ気にならない程度まで痛みが少なくなります。個人差はありますが、全く変化が無い人はいません。
反面、命に係わる副作用がある
低用量・超低用量ピルの場合、命に係わる副作用として「血栓症」が挙げられます。最大のデメリットであり、決して軽く捉えるべき副作用ではないことは言うまでもありません。
しかし低用量・超低用量ピル服用時以上に、血栓症のリスクに晒される状態があります。それが「妊娠」です。
ピルは「人生の薬」
男性にはピンとこないと思います。
月経の煩わしさ、行動制限、それと一生付き合っていかなければならないという女性の人生……その末端にあるのは「妊娠する性である」ということ。
それが負担だとは言いません。でもそれが調整できるというのなら、そんなに良いことはありません。
ピルは基本的に避妊の為に飲まれます。それは大前提です。
なぜなら、ピルには副作用が伴うからです。
その副作用と避妊の効果を天秤に掛けた時、避妊効果の方が勝るからピルは有意になるのです。
その避妊に加え、月経の負荷が減るという副効果は、けっして副効果にとどまりません。
日本は、この「副効果」の為だけに「治療薬」として、一部のピルが認可されているというわけです。
具体的には、月経困難症、子宮内膜症、月経前症候群(PMS)などに処方されます。(海外では子宮筋腫にも使われるものでしたが、日本ではなぜか真逆に禁忌とされた経緯があります)
ですが実際には、避妊の為に飲むピルユーザーと、副効果の為に飲むピルユーザーとの間には、そんなに言うほどの境目がありません。
なぜなら「副効果の為に飲むけれど避妊の効果があるから安心だわ」と思うユーザーは、沢山いるからです。(更にコンドームを使う人も沢山います)
しかし逆に言えば副効果の為だけに低用量ピルを服用するという場合には、リスクが勝ります。治療目的として飲まれている方も、避妊目的の方も、副作用については重々勉強しておくべきです。
低用量混合ピルの種類
2019年現在の日本で処方される低用量・超低用量混合ピルについては、以下のようです。
分類 / 世代 | 処方目的・避妊効果・備考 | |
マーベロン | 低用量 1相性 / 第3世代 | 避妊 |
ファボワール | 低用量 1相性 / 第3世代 | 避妊 マーベロンのジェネリック |
トリキュラー | 低用量 3相性 / 第2世代 |
避妊 |
アンジュ | 低用量 3相性 / 第2世代 | |
ラベルフィーユ | 低用量 3相性 / 第2世代 | |
シンフェーズ | 低用量 3相性 / 第1世代 | 避妊 |
ヤーズ | 超低用量 1相性 / 第4世代 | PMS・内膜症等の治療(避妊は未認可だが海外では避妊薬) |
ヤーズフレックス | 超低用量 1相性 / 第4世代 | PMS・内膜症等の治療(避妊は未認可だが海外では避妊薬) ヤーズと同成分で実薬28錠構成になったもの。連続服用が目的 |
ルナベルLD | 低用量 1相性 / 第1世代 |
月経困難症・内膜症等の治療 |
フリウェルLD | 低用量 1相性 / 第1世代 | ルナベルLDのジェネリック |
(ルナベルULD) | (超低用量 1相性 / 第1世代) |
月経困難症・内膜症等の治療 |
ジェミーナ | (超低用量 1相性 / 第2世代) |
月経困難症・内膜症等の治療 |
オーソM / オーソ777 / トライディオール は販売中止になりました
最初にオススメのピル
血栓症発症リスクへの懸念から、最初のピルにお勧めしたい種類は「第二世代の」「低用量の」「1相性」のものです。
しかしこのタイプは日本では認可されていません。なので次点で「第二世代」「低用量」である、トリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユの群。
避妊目的の方はもちろん、治療目的の方もできれば「最初にこれを飲みたい」という要望を出されると良いと思います。
- 第3世代/第4世代黄体ホルモンのピルの方が血栓症発症のリスクが序盤若干高い傾向にある
- 考えられている原因はアンドロゲン作用の少なさではということ
- 内因性エストロゲンとの兼ね合いを考慮し念の為月経初日に服用を開始する
特に治療目的の場合、先生の親切心から「超低用量の方が副作用が少ない」という認識だけでヤーズを最初に処方されるケースがとても多いです。保険適用銘柄で選ぶならルナベル(避妊も目的にするならLD)を希望されるといいでしょう。
ヤーズやマーベロンが気になる場合には、それらを半年~1年程度服用を継続された後に切り替える方が良いと思います。
世代とは
ピルに使われているホルモンは世界で日々開発されてきたものです。それら開発された女性ホルモンをそれぞれ世代ごとに分類した呼称です。
相性とは
「そうせい」と読みます。
身体の状態によりホルモン値をそれぞれ変化させることで負荷を減らせないかという考えから、21錠中のホルモン量を多段変化させたものを分類する語です。
おおよそ序盤中盤終盤と3層に変化させたものを「3相性」、
前半後半の2層のものを「2相性」、
変化のない、すべての錠剤が同じ用量のタイプを「1相性」と呼びます。
基本的には3相性のピルも、順番をバラバラに飲んだとしても避妊効果は持続します。
ただしホルモン量のアップダウンにより不正出血が発生する可能性が高くなります。
実薬・偽薬とは
低用量混合ピルは基本的に、21錠の連続服用→7日間の休薬期間のワンセット28日間で服用していきます。ヤーズについては実薬24日+休薬4日間と短くなります。
休薬を取らない場合もある通り、休薬期間そのものは必須ではありません。(飲み方のページにて解説します)
避妊に必要な各種ホルモンが含まれた錠剤のことを「実薬」と呼びます。
低用量混合ピルには、逆になにも入っていない錠剤が存在します。これを「偽薬」または「プラシボ」「プラセボ」「プラシーボ」等呼びます。
偽薬はただの砂糖コートの錠剤です。その期間には服薬が不要だけれども、「飲まなくなると習慣を忘れそう」という所から偽薬が含まれています。ですのでこの錠剤は飲まなくても全く問題ありません。
偽薬は実薬の後に休薬として飲みますので、必ずシートの一番最後に7錠(ヤーズは4錠)付いています。他とは色が違ったり大きさが違ったりの工夫がされています。
製品には偽薬込みシートと偽薬なしシートの二種類が販売されているものがありますが、実薬は同じ錠数ですので多い方が得とかいうことはありません。偽薬を飲む習慣がない人は偽薬を捨てれば済む話なので、21錠シートを置いていない医院の方もあります。
避妊できるのに避妊効果が書かれていない?
ほぼすべてのピル関連薬剤は海外で開発されたものです。
その海外では、上記の表にあるピルは大半が「避妊目的に作られた」ピルになります。
その為、認可はされていませんが「ルナベルLD」「ヤーズ」も避妊効果が得られます。
ただし「ルナベルULD」だけは、日本で開発され月経困難症治療の認可がされたルナベル錠であり、成分的には海外でも「避妊効果が確認されていない値」の超低用量のものですので、注意が必要です。(まったく避妊できないという感じではありません、すごく妊娠しづらくなるのは間違いないでしょう)
ルナベル、ヤーズは基本的に治療目的で処方されるものですので、健康保険だと3割負担の金額になり、実費でおおよそ2,000円程度になります。
一方その他の避妊用低用量混合ピルは2,000円~3,000円前後、全額実費で保険適用はありません(避妊についての薬剤・処置はすべて実費になります)
ここから導けることは、ルナベル・ヤーズは保険分も含めると実際には6,600円ほどになる、ということですね。その7割が保険料から支払われています。薬剤についての価格は特殊なものも含めると上はキリがありませんが、日常的に服用し、かつ人生に必須である避妊薬が、ものすごく高価に設定されてしまっている……とも言えます。日本は避妊用のデイリーピルさえ高額です。
低用量混合ピルで避妊ができるしくみ
ピルで避妊ができる理由は、実際にはとても複雑です。
一般の人の認識だと「脳に身体を妊娠中と思わせて妊娠しないようにする」みたいな感じでしょうか。
これはまあ、10分の1くらいは合っています。
そもそも排卵させない
低用量混合ピルは、強力に排卵を止める力があります。
平時の女性のホルモンバランスは時期によって変化することで、そのホルモンバランスでもって「排卵する」「内膜を剥がす」「内膜を厚くする」という指令を出しています。
低用量混合ピルを服用すると、丁度平時の女性の「排卵直後」に近いバランスになり、排卵が不要な状態を脳に知らせます。
子宮内膜を薄くする
生理が起こるのは「子宮内膜の取り換え」の為であり、その子宮内膜は「受精卵を受け止めてはぐくむ為」に存在します。
しかしこの子宮内膜が、うっすいせんべい布団だと受精卵側も着床しづらいわけです。
子宮頚管の中がねばっこい
同人誌の子宮描写ではたまに、子宮内にドバドバ精液が放出されるみたいな描き方がされていますが、実際には精液そのものは入口でシャットアウトされ、更に子宮の入口に降り立つ精子は僅かです。
皆がエロ漫画で「子宮口」と呼んでいる先にはすぼまった管部分があり、そこを子宮頚管と呼んでいます。
その管部分にある粘液が、子宮頚管粘液です。子宮の入口は基本的に液で塞がっており、精子はこの粘液を泳いで子宮内に入り込みます。排卵時期にはこの粘液が変化し、精子の移動を補助していると言われています。
ピルを飲んでいると、この粘液の粘り気がとても強くなり、精子の移動を妨げます。
低用量混合ピルはシステム的には万全だが…
万が一飲み忘れをしてしまったという場合、あるいは休薬に切り替わった場合などに、時折「すり抜け排卵」が発生する可能性があります。
もし休薬中にすり抜け排卵が起こっていたとしても、消退出血後は子宮内膜がほぼ無い状態ですから着床はできませんので問題にはなりません。
しかし人間誰しも、「時間を忘れてしまったり」「持ってくるのを忘れてしまったり」「つい違うことをしていたり」「イベントがあってイレギュラーな時間だったり」ということはありえます。
しかし人間ですから、「忘れることが悪い事」とは言えません。
常に毎日同じリズムで生活をする(できる)人は、ほぼ存在しないと思います。
万が一飲み忘れても、残りふたつの「頚管ネバネバ」「せんべい布団」にて、受精・着床が回避できる可能性は高いです。しかし、あくまで可能性が高いというだけで、その時の状態によっては妊娠する可能性はもちろんゼロではありません。
ですので、低用量混合ピルについては、残り二つは暫定的に無視して、あくまで「排卵をどれだけ抑制できるか」を基準にして、飲み忘れについて対応します。
低用量混合ピルとコンドームの比較
日本で選択できる避妊方法 (1) で、パールインデックスについてを書きました。
パールインデックスとは、セックス一回の妊娠率を現した値ではないよ、一年間その避妊方法でセックスをした場合、100人中何人妊娠するか?の値だよ、というお話でした。
日本でよく使われているコンドームと、日本で一番現実的な現代的避妊法であろう低用量混合ピルの値を比較すると……
一般的な使用 | 理想的な使用 | 一般価格 | |
コンドーム | 18 | 2 | 50~100円前後 / 個 |
低用量ピル(混合) | 9 | 0.3 | 1,500~3,000円前後 / 月 |
※ 一般価格の範囲はよく観測される値の範囲で、実際にはこれより上の値段も下の値段もあります。またコンドームにはスタンダードなタイプとハイクオリティな付加価値のあるものとで値段が随分違います
一般的な使用とは、その避妊法が初心者の人から、長年使っているベテランの人まで、すべてのケースを含んだうちの値ですので、理想的な使用よりも低くなっています。
理想的な使用とは、いわばベテランの人が、更に「明確にミスをしたケース」を除いた値、という感じです。ピルの場合には「この日に飲み忘れたのでそれのせいだ」など。
値だけを見ると、コンドームとピルの、「一般的」「理想的」な値の変化の差がとても大きい気がしますよね。(18/2 に対して 9/0.3 では、3.3倍もピルの方が低くなっている)
これは、コンドームの物理的限界を意味しています。
ピルは「上手く使いこなす」にはある程度の知識と対策が必要であるものの、可能な限りの対応をすれば「ほぼ完璧な避妊ができる」ということを意味します。これが科学的避妊と物理的避妊の大きな差です。
逆に言うと、コンドームの物理的限界はつまり、「いくら気を付けていても物理的な破損は一定確率で発生しえる」ということです。
もちろんコンドームメーカーさんは、人の人生を担っているわけですから万全の製造管理でアイテムを世に送り出して下さっているのは間違いないです。
けれども、どうしても物理的な破損というものは、どれだけ丁寧に扱おうと、どれだけ回数をこなそうと、必ず発生します。なぜならやはり、人間とは「エラーを出す生物」だからです。
例えば、ただ「A地点からB地点までお皿5枚を運搬する」という仕事があったとして、それを全員が必ずミスをしないように毎回終えるには、どうすればいいでしょうか。
普通に考えると、「絶対に躓かない」「絶対に手を滑らせない」は、ありえないのです。
次回は、低用量ピルの具体的な飲み方について詳しく書いていきます。
17/10/22 冒頭の「基本的なこと」を追記しました
21/02/03 細部の表現と誤字を修正しました
第一回「日本で選択できる避妊方法 (1)」
次回「日本で選択できる避妊方法 (3) 低用量ピルの飲み方」