こんばんは、瑞谷です
避妊のこと、ピルの話が続いていますが、大事なことなので部分的に同じことを繰り返し書いたり、詳しく書いたりしています。
もくじ
最近の避妊関係エントリ
ピルには、高用量/中用量/低用量/超低用量と分類される「混合ピル」、そして混合していない「ミニピル」という種類があります。
詳しくは → 知っておきたい「ピルの常識」
低用量ピルは万能な避妊方法ではない
現在の日本で選択できる、避妊率の高い科学的な避妊方法のひとつが低用量ピル(混合ピル)です。
手間に対する避妊効果
低用量ピル、あるいはミニピルは、きちんと飲むことができればとても避妊効果の高い薬剤です。
そのパールインデックス(避妊指数)は、
一般的な使用(9)、理想的な使用(0.3)
コンドームの値は、
一般的な使用(18)、理想的な使用(2)
この数字は、きちんと飲めないならば、理想的な使い方と比べて30分の1も避妊率が低くなるとも言えます。
それに対してコンドームは、9分の1程度。しかし上限が限られ、どんなに気を付けても100人に2人くらいは破損や脱落などの失敗に見舞われる可能性があるということです。
よく勉強して飲み忘れも少なく最善の飲み方をすれば、避妊率は限りなく100%に近くなる…… しかし逆に言うと、そこまで気を付けないと、一般的な使用程度の値に留まってしまうということです。
知識が不足している人、うっかりする人、毎日決まった時間に何かするのが苦手な人には、理想的な値にするのがどうしても難しくなります。
それだけ手間が掛かるピル。
でも本当は、何事にもできるだけ手間が掛からず特別な能力がなくとも十分に効果が得られるに越したことはありません。
でも、娯楽のようなセックスの為に避妊をするのだから、そのくらいの手間は当然だろうと思う人はいるかもしれませんね。
でもそれは、今までリプロダクティブヘルスについてを書いてきたそのままです。
避妊は権利。技術的に可能なら、誰にでも同じように使えるアクセスができる避妊方法を確立することが理想です。
状況的には日本はまだまだ難しい所がありますが……
血栓症のリスク
ピルは薬剤なので大なり小なり副作用があります。
特に低用量ピルで最も大きなリスクとして挙げられるのが、血栓症です。
そもそも低用量ピルを飲まない人でも、血栓症は発症します。
その発症率が、低用量ピルを服用すると少し上がります。
低用量ピルを飲まない人で、静脈血栓症は年間1万人に1〜5人程度の発症率、混合ピルを飲むと2~3倍の3〜9人程度に増えるようです。
特に低用量ピルの服用序盤は、最もリスクが高い時期になります。
低用量ピルの血栓症リスク原因のひとつが卵胞ホルモン(エストロゲン)で、 これは自前で分泌される卵胞ホルモンにプラスして、服用分の卵胞ホルモンが増える為にとても多くなり、その分だけ血栓症リスクが増加するという所です。
服用初期の血栓症リスク
服用を継続し卵胞の成長を止められるようになると分泌が減っていく為、継続服用で血栓症についてのリスクは一定の所まで軽減され安定します。
つまり、何かの理由で服用を中断、例えば二日以上飲み忘れた時の対応を「出血が来るまで服用中止」にし、更にそれを繰り返すというような飲み方は、とてもリスクの高いことと言えます。
血栓症の初期症状については必ず知っておき、見逃さないように、服用初期の3ヶ月は特に警戒する必要があります。
世界では一時、クイックスタートと呼ばれる、月経初日以外に飲み始める服用方法が流行したことがありました。
日本のコピペアフィリエイトサイトの中にもクイックスタートでの服用を紹介しているブログが存在します。
ですが、卵胞が育ち始めてしまった状態で服用を開始すると、血栓症リスクがより高まる可能性が考えられます。低用量ピルは基本的に月経初日から服用するようにしましょう。
(クイックスタートのデメリットはまだ明らかにはなっておらず、懸念要素として)
また初めてのシートは超低用量ピルを避け、できれば第二世代黄体ホルモンのトリキュラー/アンジュ/ラベルフィーユを選択します。
年齢による血栓症リスク
低用量ピルは年齢が高ければ高い程、相対的に血栓症リスクが高くなります。
具体的には35歳以上の初めての服用は絶対に止めましょう。
長期継続服用の場合には様子を見て続行が可能と言えば可能ですが、海外では基本的に他の避妊法へと切り替えていく時期になっています。
(選択肢が少ない日本ではそれ以外というのも難しい話ですが…)
一時日本では30代40代に初めての低用量ピルを処方される「流行」がありました。
更年期に低用量ピルが良い!というような情報を、メディアは一時とても書きたてましたし、そうアナウンスする病院もありました。
今は流石に学会あたりの通達か、おおよそ控えられていると思いますし、婦人科医師の認識も少しずつ変わってきた雰囲気はあります。
しかし血栓症についてのリスクと予兆についてを明確に説明している病院は、現状もそんなに言う程多くはないでしょう。
そういう状況下で、正しく判断できるのは悲しいかな自分自身しかいません。まだまだ自分で勉強するしかないのが実情です。
肥満・喫煙による血栓症リスク
肥満の人、喫煙している人は血栓症のリスクが高まります。
加えて30代とあらば、絶対に止めましょう。
若い世代でも慎重投与、できれば痩せて禁煙します。
抗リン脂質検査
「抗リン脂質抗体症候群」という指定難病があり、日本では1万人の患者がいると推測されています。最近だと間下このみさんが疾患していると公表されました(彼女は自身が妊娠するまで病について認識されていなかったそうです)。
血栓症リスクが高く、妊娠時に流産や胎児死亡等の合併症を起こす自己免疫疾患です。ピル服用時には同様にリスクが高くなります。
事前に内科等でも検査が可能です。
血栓の予兆
ピルを飲まなくとも、血栓症は一般の人も発症する可能性があります。
予兆についてを知り、対策を得ることで、ピルユーザーもそうでない人も危険を避けることができる可能性がぐっと高くなります。
緊急に受診が必要な症状一覧 (ピルとのつきあい方より引用)
1) 息を吸う時により痛い鋭い胸の痛み
2) 息切れ
3) 吐血
4) 痛みを伴う足の腫れ
5) 足や手の脱力・無感覚または針で刺すような痛み
6) 激しい腹痛
7) 失神・卒倒
8) 普段より激しい頭痛・片頭痛
9) 突然の舌のもつれや視力障害(特に片目のかすみ)
10) 黄疸(皮膚や目)
基本的には循環器科を受診、ピルの服用と血栓症の疑いを伝えましょう。早くに受診できそうにないならその他の科目へ。目については眼科へ。
ピルを飲む人もそうでない人も、日常的に
・ずっと同じ姿勢でいない
・適度な運動と水分補給
という点に気を付けて生活しましょう。
他の選択肢は少ないけれど……
血栓症の最大リスク要因は年齢です。年齢が高い方がリスクが高くなりますが、残念ながら日本では年齢に応じた選択肢が乏しいです。
子宮内避妊システム「ミレーナ」
子宮内にアイテムを挿入し、且つそこから黄体ホルモンの放出により内膜の抑制と着床阻害をする避妊方法です。
経産婦であれば挿入が可能、未産婦でも子宮サイズにより挿入が可能です。
適応外処方「ノアルテン錠」
一応ミニピルの範囲であるノアルテン錠を、避妊用として処方してもらう方法です。
理解ある産婦人科を見つけないと、なかなか処方しては貰えないのが現状ですが……
ミニピルの個人輸入
ミニピルであれば血栓症リスクを高めることなく服用することができます。
自己責任ではありますが、日本でも個人輸入で勉強して服用されているミニピルユーザーは意外と多く、私個人も大きな声でおすすめとは言えませんが、ひとつの選択肢としてありえると思います。
日本の死亡事例は結果的にとても多くなってしまった
ユーザー数に対して、異常に多かったことは事実です。
一時報道にも大きく取り上げられており、低用量ピルへの懸念は強くなった時期がありました。
その背景には前述のような、30代40代への処方を安易に行った、血栓症症状についての説明の不足(あるいは一切なし)による所が大きかったでしょう。
私がこのようなブログで色々と書いている理由のひとつは、女性の選択肢を増やすこと。
情報を知れば選択肢が増えます。
選択を知れば、声を上げることもできます。
そうすれば、変えられることも、きっと増えます。
私はそう信じています。
社会に、医師に、あるいは男性に、お世話してもらわなければ、自分で学ぶことも選択することも出来ない、そんな女性ではありたくないのです。