「治療薬」としての低用量ピル

書いた人: 妻

 こんばんは、瑞谷です

 ピルについて、服用方法、種類などをこれまで書いてきました。
 わかりづらい部分がありましたら、是非ご指摘頂ければと思います。

 今日は少し踏み込んで、日本にとってのピルについてのしがらみのひとつである「低用量ピルの治療薬認可」について、できるだけわかりやすく書いていきたいと思います。どうぞお付き合いください。

 混合ピルが「治療薬認可のみ」されているのは日本だけ

 日本で認可・販売されている、避妊できる低用量・超低用量ピルの中で、「ルナベル」「ヤーズ」は特殊なものです。
 要するに、この2種は「月経困難症」「子宮内膜症」「PMS」などの「治療用」として認可されました。

 ルナベルは、元々「オーソ」という種類の低用量ピルと同成分です。
 1974年にドイツで承認、以降世界中で使われていましたが、現在はやや旧世代的な低用量ピルになっていると思います。

 日本では元々1999年の避妊用低用量ピル認可時点で、「オーソM」として発売されていました。(現在オーソMは販売終了)
 その「オーソ」と同成分を再申請、2008年に治療用認可されたものが「ルナベル」です。

 「ヤーズ」は日本では2010年、同様に「治療薬」として認可・販売開始された、第四世代の超低用量ピルです。

それ以前の日本のピル

 1999年の低用量ピル認可以前にも、日本にはピルがありました。それが中用量ピル(プラノバールやソフィアなど)です。

 治療薬認可されましたが、当時実際には思いのほか多くの女性に「避妊用」として、いうなれば「逆転用」されていたようです。
 むしろ現在のピル使用状況と比べると、当時の方が活発だったという赴きもあったようです。
(実際当時の産婦人科医がどのような方針で処方していたのか、現場のことを私は知らないのですが、我妻先生という方がご尽力されたようです)

 「治療用」の転用、価格としてはとても安価でした。
 現在のプラノバールは薬価として1錠あたり「13.9円」、もし21錠飲む場合には291円です。
 当時はもう少し高かったとは思いますが…そのくらいか少し上の価格で、そして「産婦人科限定処方ではなかった」「内科や小児科でも処方されていた」という所から、その普及の背景が想像できます。

低用量ピルの「価格」

 日本の避妊用低用量ピルは基本的に「価格自由」です。要するに、納入価格はあれど、そこにいくら「色」を付けるかは産婦人科それぞれのさじ加減であるということです。

 逆に「治療用」低用量ピルは価格(薬価と言います)が決まっています。

「避妊用」低用量ピル

 概ね同じような金額にはなっているようですが、ある意味地方ほど安定していて、おおよそ2,800円~3,000円近く、都心になると産科を持たない積極的な婦人科で1000円台の処方があるようです。
 (今はジェネリックがあるので1000円程安い場合もあります)

 中には医師の判断で信頼できる所から「個人輸入」をして、海外製品を安価に処方して下さる病院もあるようです。(それはそれで、日本がそれだけ不遇だということなのですが…)

「治療用」低用量ピル

 ルナベルLD錠の1錠あたり薬価は、現在237円。
 ルナベルは基本実薬21錠シートで偽薬なしですので、4,977円になります。ちなみに認可当初は1シート6,990円でした。
 日本の「避妊用」低用量ピルも海外と比べると2倍から10倍くらいの値段で驚くほど高いですが、本当にこの価格は異常。

 しかしこの値で実装されたのは、結局の所「治療薬化」前提ゆえの「保険適用価格」のせいです。
 3割負担の0.3掛けすると、1,493円。このくらいなら「ジェネリックの低用量ピル」や「都内の安価な病院」と張り合えます。

 しかしその金額をカバーしているのは、何でもない「健康保険」です。

実際「治療用」と「避妊用」では何か違うのか

 基本的に、日本の治療用ピルユーザーも、避妊用ピルユーザーも、飲み方は何一つ変わりません。

 治療用ピルユーザーにとって、血中ホルモン量の安定が治療に繋がるわけですから、ダラダラとマダラ飲みのようなことをすればそれは服用の意味がありません。飲み忘れた時には途端に下降しますから、相応の対応が必要です。

 確かに、避妊用なら「服用忘れが13時間になってしまった…」という場合にシビアに追加を考える所、治療用なら「まあいいか」と言えなくもないかもしれませんが……それは、イコール「いい加減でいい」ということにはなりません。
 12時間を過ぎると血中濃度は不足し、すり抜けて排卵をするということも治療用ユーザーは知った上で、勉強した上で服用をしなければなりません(治療用で飲んだことはないので、どの程度説明がされるか私は知りませんが)

本当は境目なんか存在しないはずだった

 何度か書いていますが、「治療用」ピルユーザーと「避妊用」ピルユーザーには、実際にはそんなに言うほど「境目」なんかないのです。

 例えば「月経量・月経痛が重くてしんどいな」と思っていた人が、避妊用にピルを飲むようになった。避妊の為だったが、月経も軽くなってとても楽になった。
 これは「ピルの恩恵」です。

 「治療用に飲んでいたけれど、彼氏が出来た」「避妊出来ることを知っていた、避妊について安心できた」これはある意味、逆恩恵……になりますが、本来「ピルとはそういうもの」です。

 ピルは「避妊の為」に開発されました。
 その後ピルユーザーは多くの避妊以外の恩恵を受けます。
 月経量・痛みが軽くなる、調整が出来る、結果活動的になれる、前向きになれる。過去のピルユーザーは皆、この恩恵を、自分の身体を持って知ったのです。

 日本だけではない、海外のピルユーザーの、そういう思いの上に「ピルの副効果」としての日本の「治療用ピル」は、いわば乗っかっているわけです。

 沢山の女性にピルという土壌が培われたことを念頭に、「治療用」ピルユーザーの一部の方が時々口にされる「ピルは治療用としても使われるのに(避妊のことばかり言わないで)」という言葉を考えてみて下さい。
(実際にtwitterなんかでも時々見掛ける言葉です)

 私は「誰でもない蔑視しているのは自分たちではないか」「これまでの女性の思いを踏みにじっている言葉だ」と感じてしまうのです。

日本の特例「ルナベルULD錠」

 日本にはイレギュラーな、日本独自の超低用量ピルが存在します。
 それが「ルナベルULD錠」です。

 ルナベルは本来「第一世代黄体ホルモン:ノルエチステロン 1mg」と「卵胞ホルモン:エチニルエストラジオール 0.035mg」の混合ピルでした。
 その用量で海外・日本にて避妊についての試験が行われ、認可に至っています。

 日本では更に独自に「ノルエチステロン 1mg」と「エチニルエストラジオール 0.02mg」の、いうなれば卵胞ホルモン超低用量の「新しいピル」を作りました。

 開発元のノーベルファーマ社はこれを「(この用量で)月経困難症治療剤として承認された薬剤は、世界で初めてとなります」という説明でリリースしています。

 今更第一世代黄体ホルモンで超低用量を開発というのが少し前時代的……というのは個人の感想ですが、そもそも世界ではどこも第一世代で超低用量を作ろうとは思っていなかったのではないかと私は考えます。まして治療用とは……(そりゃあ世界で初めてだよ)

 つまりこの「ルナベルULD」は、世界のどこでもこの卵胞ホルモン量で「避妊についての試験」がされていません。
 「ルナベルULD」に関してだけは「治療用として服用しているけれども避妊効果も期待したい」ということができない可能性があります。(とても妊娠しにくい状態ではあると推測はできますが)

 「ルナベルULD」の販売が決まるにあたり、既存の「ルナベル錠」は「ルナベルLD」と名称を変更、結果ルナベル錠は「ルナベルLD」「ルナベルULD」の二種類になりました。実にややこしいですが、「避妊できる方はルナベルLD」です。

避妊の効果を望まずに低用量ピルを飲むということ

 低用量ピルはそもそも「避妊薬」です。
 妊娠した場合のリスクを天秤に掛けるからこそ、服用に意味があります。

 妊娠した時のリスクとは、出産をしない場合の中絶、出産する場合の母体について、そして妊娠時の血栓症リスク上昇があります。低用量ピルを服用すると血栓症リスクが上がりますが、妊娠時の血栓症リスクはそれを更に上回ります。

 つまり、避妊を目的にしてこそ、低用量ピルの副作用リスクが低くなると言えるわけです。

 しかし「治療薬としてのみ服用する」と、月経困難症や子宮内膜症に対して「血栓症発症率の上昇」という大きなリスクだけを背負うことになります。
 もちろん月経周辺の困難な病気が、リスク低いとか軽度と看做せるということではありませんが、しかし重い月経で死んでしまう人はいません。

 子宮内膜症そのものによる死亡例はありませんが、日本では子宮内膜症の為にヤーズを服用、血栓症にて死亡した例はあります。

 リスクの無い薬剤はもちろんありません。
 しかし、避妊を目的にしない低用量ピルは、大幅なリスク上昇に対してメリットが勝たないと言えます。

 治療用として、月経が重い為に服用する、そして自分は定期的なセックスの予定がないという人は、十分にリスクについて考えておかなければなりません。

 こういう場合に必要なのは、治療用に認可された「低用量ピル」ではなく、リスクの低い「ミニピル」だったはずなのです。
 しかし残念ながら日本は理解乏しく、進みませんでした。


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